第1220話 ヤバいもの
「ねぇ松清子、俺、冷蔵庫でなんかヤバいもの見つけちゃったんだけど」
旦那です。
のっけから旦那の台詞でスタートです。
宇部作品はこのように会話文から始まる話が多いように思います。こうすると、読者様を惹きつけることが出来る、みたいなのを読んだことがある気がするのと、自分が実際にこんな感じで始まると惹きつけられるからです。
ちなみにどれくらい会話文で始まってるんだろうと思い、さすがに全部は確認出来なかったんですけど、試しにKAC作品だけチェックしてみたところ、13作品中12作品が会話文から始まっていました。私どうやら109作公開しているらしいんですけど、この調子だと100作くらいは会話文から始まっているかもしれません。
それは置いといて。
そう、旦那が冷蔵庫でヤバいものを見つけた、という話なのです。
えっ、何か期限切れてたやつでもあった? だけど奥の奥の魔窟に眠っていたドレッシングとかタレ関係のはこないだ全部捨てたし……?
などと考えつつ、「何が入ってたの?」と尋ねます。すると――、
旦那「なんかね、『とても苦い』ってシール貼られてるペットボトルがあってさ。あれ、何……?」
宇部「あっ……」
話はその数日前に遡ります。
ちなみにこの数日前に逆上る形式も宇部作品に多いのですが、調べるのはもう面倒なのでやめます。
宇部「何でも良いからさ、ペットボトル(500mlくらい)の無糖のコーヒー買ってきてくれないかな。ちなみにいま飲んでるのはこれ(キ○ンのFIRE)」
旦那が夜にお出掛けした日のことです。
「帰りにコンビニ寄るけど、何か欲しい物ある?」に対する私のアンサーが上記の台詞でした。そしてそれを「オッケー任せて!」と快諾した旦那は、なんと無糖コーヒーを3種類買ってきたのです。
これはあれか。
私に利き無糖コーヒーをやれってことなのか……?
旦那からの無言のメッセージ、確かに受け取りました。受け取りましたが、一人では出来ません。
とりあえず、3種類全て飲んで味の違いを楽しむことにしました。いつもは牛乳で割って飲むんですけど、まずはブラックでいただきます。さぁ、この馬鹿舌に味の違いなんてわかるのでしょうか。
で、最初に飲んだやつがすこぶる苦くてですね。ボスのクラシックブレンドとか言うやつで、エスプレッソの多重奏とか書かれていました。ただでさえ苦いエスプレッソ(エスプレッソが苦いということくらいは知ってる)が多重で襲い掛かってくるのですから、そりゃあ苦いはずです。
とりあえず、この衝撃を忘れないよう、お肉を小分けする時などに日付を書いているシールに『とても苦い』と記し、ボトルに貼ったのです。冒頭で旦那が発見したのがそれです。これはですね、ついうっかりストレート(コーヒーって普通ストレートって言わねぇな)で飲んでしまわないように、という私自身への注意喚起です。普段は基本的に牛乳で割るんですけど、夜に牛乳飲んだら太るかな、みたいな中途半端なダイエット意識により、ブラックで飲んだりもするのです。
そんな自分へのメッセージがまさか旦那に見られてしまうとは。
ましてそのコーヒーは旦那が私のために買ってきてくれたやつ。
「お前が買ってきたコーヒー、苦すぎて飲めたもんじゃねぇんだが?」
みたいに思われては一大事です。苦いけど、まずいわけではないのです。これはあくまでも私には苦かったというだけですし、牛乳で割ればちょうど良いのです。
だからね、もう必死に否定しましたよね。
宇部「違う! 違うんだよ! これはあれ、その、感想を書いてみただけだから! 飲んだら苦かった、っていうのを忘れないように心に刻もうと思ったんだけどすぐ忘れるから、忘れないように書いただけだから! これは牛乳で割ると美味しいやつだから!」
冷静に考えてみたらですよ。
感想を書いてみただけってのも十分謎ですし、忘れないように書く必要がどこにあるんだって話だし、お前何でも牛乳で割るじゃねぇか。
けれども旦那はもう慣れたものですよ。こんな妻の奇行なんて慣れっこなんですよ。
旦那「そうなんだ!」
そうなんだ、の一言で納得しましたから。納得したのかな。それとも「相変わらず何か馬鹿なことやってんな」って思いつつの「そうなんだ!」だったかもしれません。
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