第1214話 トッピング

 今日はですね、我が家のむちむちアイドル娘ちゃんのお話です。


 娘ちゃんはですね、ママに似ずにハイパー高コミュ力女子でして、一年生の人数は他学年よりも多くて4クラスあるんですけど、そのすべてのクラスにもう友達がいるそうです。こっわ。


 なので、お出掛けすると高確率でお友達に遭遇します。向こうから「あっ、娘ちゃーん!」と声をかけられるパターンもあれば、娘の方から「あっ、●●ちゃーん!」と声をかけるパターンもあります。知り合いを見かけても限りなく気配を0にしてステルスモードで切り抜ける私とは違います。強い。


 さて、そんな娘ちゃんですが、彼女は相変わらず『受注生産型』です。兄は『自分の作りたいものを作る。顧客はそれを買えばいい』というアーティスト思考なのですが、妹は『顧客が求めるものを作る』タイプ。当たればデカいのは兄だと思うのですが、安定して収入がありそうなのは娘でしょうね。それは置いといて。


 その日もですね、お風呂から上がったパパに、箱の色は何がいいだの、どんな柄がいいだのとインタビューしておりました。一体何を作る気なのかと思っておりましたら、どうやら図工の時間に空き箱で貯金箱(貯金箱指定なのか、自由なのかは謎)を作るらしく、それをパパの好みで作ったろう、ということらしいです。


 しばらくそんなやりとりをしてですね、それで一旦夕食を挟んで、で、また食後に何やらお絵描きをしていた娘ちゃんがですね、自由帳を持ってきて見せるわけです。ほうほう、あれかな? そのパパオーダーの貯金箱の完成図かな? などと思って拝見しますと――、


 全然違うやつでした。

 何か絵本の拍子っぽいやつでした。

 おい、パパの貯金箱はどこ行った。


 けれども娘ちゃんはそんな小さいことは気にしません。そんなところはしっかりアーティストです。何か、大きな木と、その近くを鳥が飛んでいる、という絵でした。


旦那「わぁ、鳥さん上手いね、娘ちゃん! もうすっごく鳥っぽいよ! ママも見てみな? もうめっちゃ鳥だから!」


 もう皆さんご存知かとは思いますが、宇部家はとにかく褒めます。客観的に見て、ぶっちゃけそこまで上手くないと判断しても、全力で褒めます。


 めっちゃ鳥ってなんだよ。


 そうも思いましたが、絵を見てみれば、もう完璧に鳥でした。なんかもう、味のある絵本に出てきそうなタイプの鳥でした。


宇部「すごい! これはもう完璧な鳥だよ娘ちゃん! 上手!」


 両親のべた褒めに気を良くした娘ちゃんは、自分の力はこんなもんじゃないと思ったのでしょう。


娘「あっ、待って。まだ描き忘れてるところあった。まだトッピングしてない」


 トッピング?!

 トッピングって何!?

 何となく言わんとしていることはわかるけど、トッピング?!


 さっとお絵描き帳を回収して、何やらちょこちょこと描き加え、再度やってきました。


 鳥、めっちゃカラフルになってました。青をベースにしていて、中南米辺りにいそうな仕上がりです。


旦那「ウワァ――! これはきれい! これは中南米にいるタイプ!」

宇部「間違いない! これはコスタリカにいる鳥だ! ケツァールに違いない!」


 『水曜どうでしょう』の中南米回を視聴済みの両親は大興奮です。テレビで得た知識を早速出します。学んだことをこのように積極的に日常生活の中に落とし込むことが大切なのです。きれいな鳥といえばコスタリカ。コスタリカは中南米の国です。もう覚えましたね?


 さて、さらなる褒めをゲットした娘ちゃんのボルテージは最高潮です。


娘「まだ! まだある! トッピング!」


 まだあるの?!

 トッピングが?!


 なんかもう、カラースプレー(手作りお菓子とかにパラパラ振りかけられてるやつ)とかのイメージなんだけど、トッピングって!


 さて、二回目のトッピングが終了しました。


『ぴっぴ』


 名前です。

 名前がトッピングされました。

 名前ってトッピングされるものだったんだ!?


旦那「『ぴっぴ』! 可愛い!」

宇部「もう絶対鳥の名前! 可愛い!」


 何でも褒めます。

 もう我々は、我が子のことならば生きてるだけでも「ちょっと何、息吸って吐いてるの? 偉くない?」って褒めますよ。


 すると駄目押しとばかりに娘ちゃんは最後のトッピングをしてきたのです。


『ぴー』


 鳴き声です。

 ファイナルトッピングは鳴き声でした! こんなのもう絶対鳥じゃん! こいつ、鳥を完璧に理解しすぎじゃね?!


 だけどトッピングなのかな、それ!?

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