第1141話 捨てるか!
夫婦って、まぁ『アレ』だの『コレ』だので会話が成立しちゃうことがあるものですから、それに甘えてついつい言葉が足りなくなることってあるじゃないですか。
いや、それは宇部さん家だけでしょ、我が家ではしっかりと会話してます!
ってお宅もあるかとは思いますが。
なのでまぁ、今回は宇部夫妻のお話。いや、でももしかしたら、「ウチもそういうことある!」「夫婦じゃなくてカップルだけどウチもです!」「親友との会話がそれです!」という方もいるのでは、などと思いつつ。
春じゃないですか。
いよいよもって春がやってきたじゃないですか。
とはいえ、まだまだ油断出来ないのが北日本。これが北海道だったなら、ぶっちゃけまだ雪が残ってたりもしますし(桜だってまだまだ咲かねぇよ)、ウチの実家の方ですと、5月を過ぎても朝晩はストーブを焚いてたりもするんですけど、秋田ですから。もう春なんですよ。さすがに雪も降りません。
それでもまだ登校時は寒いので、子ども達には綿入りのジャンパーを着せて送り出しているんですけど、さすがに足元はスニーカーなわけです。もう冬用のブーツとかあったか長靴は下駄箱にしまったわけですけど、旦那の冬用のごっついブーツだけなぜかそのまま置いてあってですね。狭い玄関なのに存在感がすんごいんですよ。
ある晩、コンビニに行くという旦那を玄関で見送っていた時のことです。
「ウチの子達、ちゃんと靴揃えるの偉いなぁ」
そんなことを旦那が言うわけです。旦那と子ども達は一緒に帰宅しますんで、てっきり旦那が揃えてくれてるもんだとばかり。マジかよ。偉すぎじゃね。誰が躾けたの? 旦那?
それでですよ。きちんと並んだ小さい靴達の中に、親分みたいなサイズのごっつい冬靴があるわけですよ。いやもう、季節感よ。
宇部「そろそろ良夫さんのこの靴もしまった方が良くない? それとも現場ってまだ雪残ってたりする?」
旦那「いや? さすがにもう雪ないよ」
宇部「そんじゃしまおうよ」
旦那「そうなんだけどさ。いや、入らないんだよね、下駄箱に」
宇部「うっそ、そんなにデカいの、その靴?!」
いやいや、確かにデカいはデカいけど、私の長靴とかブーツでさえ入るんだから入らないってことはないでしょ。
そう思いながら下駄箱を開けますと――、
最下段のブーツ系収納部が私の長靴やらブーツやらで埋め尽くされてて。
宇部「成る程。こりゃ入らんわ」
旦那「でしょ」
まじまじと私のブーツ達を見つめますと、よくよく考えたら今シーズン一度も履かなかったやつもあったりするわけです。もう10年以上前くらいに買ってたやつです。買ったのは大昔でも、毎日履き倒すわけでもないし、ここ数年はオシャレ長靴みたいなのばっかり履いていたので、見た目はそこまで劣化しておらず、全然まだ履こうと思えば履けるやつ。ただ、底が割とすり減って来たかな? みたいな。いやもうこれ、そろそろ捨てても良いでしょ。そんなことを考えてですよ。
「いっそ(履いてない私のブーツを)捨てるか!(そしたら良夫さんのブーツ入るし)」
そう言ったわけですよね。
時が止まってね。
旦那の。
「えっ?!」
って。
えっ、何?
何をそんなに驚いてんの。どうしたの、って思ったんですけど。そこで気付いたわけですよ。
私、「いっそ捨てるか」しか言ってないんですよね。
下駄箱に旦那の靴だけ入らない、って話をしていて、そこから「いっそ捨てるか」って言ったら、「下駄箱に入らないお前の靴なんていっそ捨てるか」って受け取られるよな、って。
宇部「っち、違う違う違う! 捨てるの、私の! 私の履いてないブーツのこと! 良夫さんの靴じゃなくて!!」
旦那「そ、そうだよね! びっくりした! 俺の靴、下駄箱に入らないって理由だけで捨てられるのかと思った!」
言葉が足りないとこんなすれ違いが起こるんだな、って思いつつ、爆笑ですよ。たぶん子ども達の部屋にまで届いていたと思うので、また朝に「パパとママの笑い声うるさかった」とか言われんのかとはらはらしてましたが、今回はセーフでした。
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