第825話 お願いだから、浸らせて

 そんなキャッチの短編を書いたんですよ。ゆあんさんの『筆致は物語を超えるか』という企画のやつです。


 私、割とこの『おねひた(お願いだから、浸らせて)』状態があるんですよね。浸りきっていたいのに、その他のあれこれが気になっちゃって、脳内の『ツッコミ宇部』がハリセン片手に「なんでやねん!」的な。いや、「なんでやねん!」は嘘なんですけど。関西人ではないので。


 ちなみに『ツッコミ宇部』のツッコミはですね、私の書くヒロインが脳内でバリバリにツッコんでる時のそのままの口調ですね。割と。


 なので、脳内でヒロインをベラベラしゃべらせるの大好きです。ここだけは私だ、と。もしかして、私、ラブコメのヒロイン属性あるんじゃない? って思いながら書いてますからね。いや、そんな話はどうでも良い。


 Twitterでもちらっと書いたんですけども、娘がね、保育園の年長さんクッキングでクッキーを焼いてきたんですよ。お料理に興味津々の娘は先月のクッキングが終わったその翌日から次のクッキングを心待ちにしておりまして、前週にお熱を出してしまい、出席が危ぶまれましたが何とか治して意気揚々と登園したわけです。


 で、帰ってきたらハイパー今日の楽しかったこと報告タイム(年長クッキングスペシャルエディション)なんだろうな、と思いつつ夕飯を作っておりますと。


 案の定ホックホク顔の娘が旦那と共に帰ってきまして。

 

「ママよろこぶかなぁ」

「絶対喜ぶよ。パパ泣きそうだったもん」


 なんて会話も聞こえてくるわけです。


 ママよろこぶかなぁ、の時点で「ハハーン、作ったクッキーをママの分も取っといてくれたんだな?」くらいのことは予想出来たわけです。でも、その後の「パパ泣きそう」で「?」となるわけですよね。


 嬉しいは嬉しいけど、泣くほどかな? と。


 そこで考えられるのが、残ったのを取っといたとかじゃなくて、もしや、ママのために作ったとか、ラッピングされてるとか、そういう感じなのでは? と。


 いずれにしてもですよ、そんな前フリがあったら、こっちも涙ぐむくらいのサービスはしないといけないわけですよ。さすがに私の涙腺がゆるゆるだからといって、たかがクッキーで……と思っていたらですね。


 もうね、予想通りにラッピングされてたんですけど、メッセージカードに『すき』なんて書かれててですね。これは正直グッとくる! うぐぐ、すごいパンチだぜ、と思ったのですが、一緒に添えられていた自分の名前がちゃんと書けていないというハプニングがあり、込み上げかけた涙が後退。イメージはあれね、欽ちゃんの仮装大賞のあれ。ひゅぅぅぅーん、って。心の中の欽ちゃんがね「もっと上げてよぅ〜」って頑張ったんですけど、駄目でした。


 けれどさらに娘はすごいパンチを放ってきたのです!


 直筆のお手紙!!

 こーれーは、泣けるやつ! 成る程、旦那を泣かせたのはコレね! オッケー、ママ、心して読むわね!


※【】は鏡文字(左右が逆になってるやつ)です


宇部「えーと? 『いつもありが【と】』う』? 」

娘「うんうん」

宇部「『ごはんおいしいもの』……『お(を)つ【く】てくレてネ』……。娘ちゃん、このレとネ、何でカタカナなの?」

娘「ちょっとわたしにはむずかしくてー」

宇部「成る程ね。『くきいおいしくたべてネ』……くきい?」

娘「クッキー」

宇部「クッキーね、了解。『しまんとにありが【と】う』……。しまんと?」

娘「『ほ』! それ『ほ』! ほんとにありがとうって書いたの!」

宇部「おおう……(娘よ、『ほ』の上がはみ出てるんだ……あと横棒との距離な。これじゃ完全に『しま』だよ)。で、『おてがミ ○○○名字●●●名前より』と……(『み』も難しかったのね……)」


 字の間違いはもちろんなんですけど、そもそもの字がまだうまく書けていないために、解読に偉い時間がかかりましてね。

 もうね、泣きたいのに泣けない。込み上げて来る度に引っ込む引っ込む。


 成る程、特に泣けるシーンでは誤字は絶対に駄目だな、と。改めて思いましたね。


 あと、クッキー自体は割と普通に美味しくてびっくりしたんですけど、振りかけられている白いやつ(シラスみたいなやつ)が何かわからなくて聞いたら、


娘「わかんない! おいしくないやつ!」


 って自信満々に返ってきて震えましたね。お前、美味しくないやつをこんなに振りかけたの……?


 ちなみに、ココナッツでしたね。

 ココナッツ苦手なのでその部分はかなり辛かったです。

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