第824話 ぶたはしゃべる
避難訓練の時って、『お』『は(か)』『し』みたいなの習いませんでした?
『お』……押さない
『は(か)』……はしらない(駆けない)
『し』……しゃべらない
っていう。
私が小学生の頃からあったと思うんですけど、これ、バリバリ現役なんですね。子ども達も避難訓練の度に『おはし』『おはし』言うわけです。
そしたらですね、息子が小学校入ってすぐに今度は『いかのおすし』というのを習ってきたんですよ。
そんなの初耳ですよ。
ハァ? イカの寿司が何だって?
何かどうやら、防犯用語らしいですね。調べてみますと、
『いか』……行かない
『の』……乗らない
『お』……大きな声を出す
『す』……すぐに逃げる
『し』……知らせる
ということらしく。
えっ、こんなのいつ出来たの?
80年代生まれのアラフォーおばさんは聞いたこともなかったやつなんですけど。それとも地元が平和すぎて浸透してなかっただけ?
ただ、これ、私は馴染みがなさすぎるだけかもしれないんですけど、パッと変換されないんですよね。『おはし』ほどのシンプルさがないと言いますか。
行かないって結局、「(知らない人について)行かない」なわけじゃないですか。
乗らないも、「(知らない人の車に)乗らない」なわけですよね。調子に、とか、口車に、とか、そういうのじゃないわけですよね。まぁそういうのもあるかもしれませんけど。この( )部分も大事なわけじゃないですか。
私なんかもともとぼーっと生きてますからね。
「えーっと、いかのおすし、いかのおすし、いかのおすしの『い』は何だったっけ?」
ですよ。そんで、「(余計なことを)言わない」だったかな? なんつって、そんじゃ次は『か』かぁ。か、か……、「(怪しい人から怪しいものを)買わない」だったかな? ですよ。
ちなみにこの『怪しいもの』というのは、白い粉や何かしらの結晶、乾燥した謎の葉っぱ、そして偽造テレホンカードですね。偽造テレホンカードっていまもあるのかな。Appleとかのカードならまだしも、偽造テレホンカードってあれ電話がかけられるだけですよね? 皆そんなに電話かけたかったのかな。昔からそこが謎でしたね。
まぁそれは置いといてですよ。
アラフォーおばさんの私にはピンと来なくとも、いまを生きてる子ども達にはきっとビンビンに刺さりまくってるのでしょうから、それは良いんですけど、またもこれ系のシリーズでですね、先日学校で自転車の安全講習を受けてきた息子が、今日の振り返りだよ、ってことでプリントを見せて来たんですね。
そこには息子が描いた自転車の絵と――、
『ぶ』……ブレーキ
『た』……タイヤ
『は』……ハンドル
『しゃ』……車体
『べる』……ベル
という言葉。
今度は『ぶたはしゃべる』かよ!
ぶたはしゃべらねぇよ!
何だ、だから何なんだ!
自転車の各部位がどうしたって言うんだ!
息子のプリントには本当にそれしか書いてなくてですね、もうひたすら自転車の各部名称を紹介しているだけの絵なんですよ。
いやいや、そんな意味のないことを学校でやるわけがない。たぶん息子がちゃんと話を聞いていなかっただけだろ、と思い、『ぶたはしゃべる』を検索。
そしたらね、ちゃんとありましたね。意味が。
ブレーキ……前後のブレーキはきちんと効くか?
タイヤ……空気は入っているか?
タイヤにキズやささったものはないか?
ハンドル……ハンドルを上から見たときに曲がっていないか?
車体……サドルに座ったときに、両足が地面に着くか?
ライトは点灯するか?
反射器がこわれたり、よごれたりしていないか?
ベル……音がちゃんと鳴るか?
でしょ?
そうでしょ?
大事なのはそこでしょ?
各部名称を覚えようぜ、じゃないからな?
お前、絶対自転車の絵が描きたかっただけだろ! 真面目に講習受けてこい!
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