第798話 馬鹿なのは舌じゃない


 これまで第一回、第二回とね、どっちの舌が馬鹿でSHOWということで、馬鹿舌王決定戦を開催してきたわけですけれども、まぁ一向に勝負がつかないわけです。


 おっかしいなぁ、各々、自分の舌の馬鹿さ加減には自信があったはずなのに。ここまで来ると、もしかして我々の舌は馬鹿ではない……? なんてことまで考えてしまいますね。この企画の存在意義(あとこのエッセイのネタ)よ! と頭を抱える感じなんですけども。


 ただね、これだけは確かだな、っていうのがですね。


 私の場合、馬鹿なのは舌だけではなかったな、と。


 先日、仕事帰りにスーパーに寄ってですね、まぁ色々買い出しをしたわけですね。途中で仕事が終わった旦那も合流しまして、仲良く一緒にお買い物ですわ。


 ここ最近は夜のうちに朝ご飯の仕込み(味噌汁を朝の分まで作るとか、朝に出すウィンナーをあらかじめ切っておくとか、鶏そぼろを作るとか)をしておりまして、消費期限間近でお安くなってるお肉(切り落とし)があったものですから、


「よし、これで明日の朝は豚丼にしよう」


 と、夜ご飯のついでに豚丼の具も作ったんですね。味付けはエバラのすき焼きのタレ。ちょっとお水で割って濃い目の味付けに。ちなみに、濃くなりすぎたら卵でとじてごまかします。


 それでですよ。

 翌朝。


 もう豚丼の具はあるし、あとはお豆腐とわかめの味噌汁を作れば〜、なんて思って、カフェオレを飲みつつぐつぐつと温めまして。


 さぁ、お食べなさい。

 ママの豚丼は美味しかろう? 何せ味付けは天下のエバラすき焼きのタレ! お前達、これがおふくろの味だで!?(エバラすき焼きのタレ)


 で、あれやこれやと片付けてから食卓に向かいますと、先に豚丼を食べていた旦那が言うわけですね。


「やっぱり牛肉は美味しいよね」


 !!?


 抜き打ち馬鹿舌王決定戦!?

 何だよおい、豚肉と牛肉を間違えるとか、ありえないだろ。

 

 そう思うじゃないですか。だからね、私は言ってやりましたとも。子ども達もね、我々の向かいに座って食べてるんですよ。このパパの発言によって「へーこれ牛肉なんだー」って間違って覚えちゃったら大変ですからね。


宇部「違うよ〇〇さん、これ豚丼だよ」

旦那「うっそだー、絶対これは牛の味だよ」

宇部「そんなわけないよ。これは豚肉のコーナー(ってわけじゃないけど、豚肉がやたら置いてあったところ)にあったやつだもん」

旦那「いやいや、まず食べてみなって。これ絶対牛だって」

宇部「えぇ〜?」


 そんで半信半疑で食べるわけですよ。まぁ、半分も信じてませんでしたけどね。無信全疑ですよ。そんな言葉ないけど。

 

 いや、もう完全に牛の味なんですよ。

 えー嘘、やっぱり私も馬鹿舌なんじゃん? 豚食べても牛に思えちゃうとか経済的過ぎる!


 と思っていたんですけども。


旦那「いや、昨日松清子は完全に牛肉を買ってたよ」

宇部「えっ?」

旦那「カゴの中見て、あー、珍しく牛肉買ってるーって思ったもん」

宇部「嘘!?」

旦那「ほんとほんと。だからこれは牛丼だよ」

宇部「マジかよ。これ牛丼だったんか」


 完全に牛丼だったんですよ。


 500円均一みたいなコーナーでですね、ずらーっと豚バラ肉が並んでまして、その隣に切り落とし肉があったんですよ。さらに20%引きとかのシールが貼られててですね、おっ安いじゃーん、って。でもバラ肉だとつい何かを巻きたくなるから、朝ご飯用だし、切り落としの方で良いかー、なんてね、そんな感じで手に取ったんですよ。


 豚バラ肉の隣にあったからといって、そっちも豚肉とは限らない!


 手に取っても、中を開けても、包丁で切っても、調理しても、まーったく気付かなかったんですよ。一口食べるその瞬間まで気付かない。味見なんてしませんから。


 お店ならクレームですよ。おい、俺は豚丼を頼んだんだぞ、これ牛じゃねぇか! って。なるのかしら。


 だからもうね、舌がどうとかじゃない。

 頭が馬鹿なんだな、って。

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