第670話 ごはんのめし
昔、実家では食べ終わったミカンの皮を袋に入れてお風呂に浮かべるという、ミカン風呂を良くしていました。その時はそんなに好きではなかったというか、袋に入れているはずなのに、どこからかふやふやの白い皮が出て来て浮いたりしていて、これは垢なのか皮なのか、みたいなのが嫌だったんですよね。
何ていうか、漫画とかアニメで見るそういうお風呂って、ミカンが丸々浮かんでいたような気がするんですよ。まぁ、どっちが正しいのかはわからないんですが。
しかし、実家を出るとですよ、段ボールいっぱいのミカンがある、というのが、どうやら当たり前のことではなかった、ということがわかったわけですね。あれが果たして買ったものだったのか、それとも親戚とか知り合いとかからもらったものなのかは謎なんですが、とにかくこっちでは買わないとその『段ボールいっぱいのミカン(だいたい食べきれなくて底の方はカビが生えてる)』という状況にはならないわけですね。
そんでまぁぶっちゃけ私は基本的に果物を欲さない人間なのです。よく言うじゃないですか、妊婦さんは酸っぱいものを欲しがる、ってやつ。それで果物をよく食べる、みたいな。それも息子の時だけで、娘の時はとにかくチョコレートとマヨネーズでしたし。というわけで、我が家には果物というものが基本的にないんですよ。お姑さんからお裾分けがあって初めて食卓に並ぶ感じです。ああ、ミカンと桃の缶詰はあります。これは風邪の時に出すやつですけど。
なので、風呂に浮かべるほどミカンがあるわけでもなく、ミカン風呂に入りたいなぁなんて欲求もなかったので、もう20年くらいそれ系のお風呂とは無縁だったわけです。
が。
旦那がですね、もらってきたんですよ。
ゆずを。
旦那の実家のお隣さんから。
ゆず湯にすると良いわよ~、って。
食べるんじゃなくてゆず湯を勧めるということは、食べるのにはあんまり適さないやつなのかもしれないです。わかりませんけど。
とりあえず、このまま浮かべれば良い、という話だったので、早速やってみたんですよね。おお、これぞ私がイメージしてたやつ!!
いや、無臭なんだけど。
え?
やっぱりやり方なんか違うのかな?
私のイメージだともう浴室がゆずの香りに満ちてるはずなんだけど?
やっぱり4つじゃ足りないの?
お湯が隠れるくらいの量じゃないとダメなのかな?
それともやっぱり皮を剥くの?
湯船の中で子ども達と旦那を待ちながら、どうにかしなければ、ととりあえずゆずを揉み揉み。揉めば香り出るんじゃない?!
ええ、出ました、香り。
揉み揉みしたら出ました。
あとから入って来た娘も、何かいいにおい~、とご満悦です。揉んだ甲斐があったというものです。
さて、そんなゆず湯楽しかったです、って話をしたいわけじゃないんです。
頭と身体を洗ってもらった娘ちゃんが湯船に入ってゆずを手に取り、それをくんかくんかと嗅いだ第一声をご紹介したいのです。それではどうぞ。
「ごはんのめしのにおいがするねっ!」
……ご飯の飯?
それってつまりお米ってこと?
ちょっと待って。
ていうかお前、『
ママ、君達の前ではそんな言葉極力使わないようにしてるんだけど?!
いや、それよりも、お前嗅覚大丈夫か?
ママはそんなゆずの香りがするような飯を作った覚えはないぞ?
そして、兄さんにまで「ほらにいに、ごはんのめしのにおいだよ」って言うのやめなさい。兄さん、「???」みたいな顔して混乱してるから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます