第512話 理想のお部屋作り
もうすぐ夏休みなんですよ。何かですね、ウチの地区はまぁまぁ普通に夏休みあるみたいで。
で、夏休みといえばですね、何が困るってやはり宿題なんですよ。いや、勉強の方はね? そこそこ何とかなることがわかりましたんで良いんです。1日にこれだけやる、って決めれば出来る子だということが去年わかったもんですから。こちらのスケジューリングさえしっかりしていれば、どうにかなるわけです。
問題は工作とかの方。大枠だけ決まってて、ハイ、あとは各自で頑張れ、ってやつ。さすがにまだ一から一人で決められませんからね、親の力が必要なのです。
とりあえず、どんなものにも対応出来るよう、牛乳パックとティッシュペーパーの箱、トイレットペーパーの芯は捨てずにとってあります。
しかしですね、まだその夏休みに入っていないというのに、もう既に工作モードなわけです。宿題のある息子のみならず、娘まで。
そんな中、「どうやらママがお宝(牛乳パックやティッシュ箱、ペーパーの芯)を溜め込んでいるらしい」という情報がどこからか漏れてしまったんですね。そうなるともう「くーださい」ですよ。仕方ないなぁ。
で、材料だけ与えて仕事行って帰ってきたらですね、まぁ何かしらが出来ているわけです。その戦いの跡が残されているわけですよね、主に居間のテーブルに。片付けろ、お前達。
さて、一体何を作ったのかと思っておりますと、息子が何やら持ってくるわけです。鴨が葱を背負って来るわけです。こっちが何か言う前に子ども達の方から作品を持ってやって来るわけです。
上部が切り取られたティッシュの箱でした。中にコピー用紙で作られた(中にティッシュがぎゅうぎゅうに詰め込まれている)昭和のヒーローっぽい人形が寝ています。イメージとしては、イナズマンとかあんな感じのやつです。息子のオリジナルキャラなのか、それとも私の知らない昭和特撮ヒーローなのかはわかりません。
「お部屋だよ」
どうやらメインはそのお人形の方ではなく、そのお人形が寝ている箱(部屋)のようです。
「これがベッドで、これがお風呂」
長方形のティッシュ箱を2部屋に分け(といっても仕切りはない)、3分の2がベッド、そして残りがお風呂のようです。湿気対策が大いに気になるところです。
で、そのティッシュ箱――いや、お部屋なんですが、ベッドの頭の方の天井(切り取られているけど)に、四角い虫眼鏡みたいなのが取り付けられてるんですよ。何これ、アンテナ? と思っておりますと、
「ここで寝ながらテレビが見られるんだよ」
その虫眼鏡みたいなやつ、テレビらしいのです。我々ブラウン管世代には思いつきませんよ。何せ、そんなほっそいバーではブラウン管を支えられませんから。液晶テレビに慣れ親しんだ平成キッズならではの発想! 天才か! と思いましたが、これは完全にあれですね、歯医者さんで体験してますね。あちらは天井に固定されてましたけど。
ただ、こちらのテレビに関しては、その支えるバーが自由に動かせるらしく(何せコピー紙製なので)、何と、ぐいーんって伸ばせば、奥の部屋にある湯船に浸かりながら見ることも可能なのです。いや、湿気対策大丈夫、その部屋?!
もうね、息子的には最高の空間なんでしょうね、寝ながらテレビが見られるだけじゃなく、風呂に入りながらも見れちゃう。半身浴が日課のOLかよ、とも思いましたけど、お前そんなに風呂好きだったっけ?!
もうとにかく完璧なお部屋を作り上げたわけです。
そこでふと気づいたんですけど、外側の壁にですね、何か表札みたいなのが貼り付けてあったんですよ。
『レイモン』
どうやらそのお人形の名前は『レイモン』というそうです。
そんな名前の特撮キャラは聞いたことがないのでやはりオリジナルキャラなのでしょう。
しかしアレですね、なんていうか、この部屋、自堕落な生活になりそうでちょっと怖いです。だってこれきっと食事もベッドの上か風呂の中ですよ? これがお前の理想の部屋なのか?! そうなのか?!
何かもうニートとか引きこもりとか、そういう感じにならないか心配です。
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