第457話 息子TV

 クリエイティブな息子ですけれども、彼は完全に0から生み出すタイプというわけではありません。彼は模倣のプロ。見たものを見たまま描いたり、作ったりすることに長けているのです。記憶力の鬼。なのに昨日のことはすぐ忘れちゃう。お前の記憶力どうなってんの。


 というわけで、今回も、見たものをそのままクリエイトしたのです。


 テレビです。

 彼はとうとうテレビを作ったのです。


 といっても、もちろんそんな御大層なものではありません。先日ですね、クレヨンしんちゃんの中で、野原家のテレビが壊れ、修理に出した、という回があったのです。修理に出したテレビが戻ってくるまで、しんのすけは段ボールで作ったテレビ(ぶっちゃけただの四角い枠。でも、ちゃんと立つように支えがある)で、ひろしに、野球やヒーロー番組を見せたりしたのです。


 段ボールでテレビが作れるんだ! すごい!


 そう思ったんでしょうね。もう早速、ママ、段ボールください! ですわ。


 よっしゃ任せろ。ママは通販大好きっ子(『子』ってお前)だから、段ボールなんて常にあるんだぜ!


 で、渡したんですよ。

 ユニクロの段ボールです。

 ええ、そうです。例のジョガーパンツを買った時のやつです。


 で、私はそのまま仕事へ行ったわけなんですけど、休憩時間にですね、旦那からLINEが来たんですよ。動画でした。


 息子TVでしたわ。

 自分で作った段ボールの枠の中にちょこんとおさまっているのです。そして、小さな紙をこちらに見せるのです。逆光やら何やらで正直ちょっと見えづらかったのですが、どうやら『ウルトラマンコスモス』のロゴのようでした。


 ほうほう成る程、番組名ね。


 そう思っておりますと、その紙をくるりとひっくり返します。裏にも何か書いてあるようです。


『コスモスの願い 巨大ヤプール登場』


 まさかの各話タイトルまで!


 そして、ウルトラマンコスモス対巨大ヤプールのバトルが始まりました。まぁぶっちゃけ、ヤプールのソフビよりコスモスのソフビの方が大きいので、そりゃあ人間の側からすればヤプールも巨大なんですけど、それよりもそっちの光の巨人の方が巨大じゃね? と視聴者の方からクレームが来そうなタイトルでしたけども。


 そして、にっこにこの息子劇場をほっこりしながら観賞していたのですが、そこで突然、息子がまたも紙を取り出すわけです。


『お知らせ』


 急に何かしらのお知らせを挟んだのです。お知らせというか、CMでした。

 細かいな!


 で、CMも終わり、さて、再びバトルか――?


 と思いきや、またも番組名の紙が!

 いや、これはアイキャッチ! 細かいな!

 しかし息子よ、そのアイキャッチ(「てってれー、ててててん♪」)はライダーのやつだ! おしい! おしくもねぇ!!


 とまぁ、そんなCMやらアイキャッチやらを挟みながら、無事、コスモス対ヤプール回は終了。最後はしっかり『終』の紙まで用意されていました。そこはかとなく昭和臭。


 もうね、拍手が鳴りやまない。

 私の心の拍手が鳴りやまない。


 まぁ、このCMやらアイキャッチやらもおそらくクレヨンしんちゃんの中でやってたやつだと思うんですけどね。そっくりそのまま作るのすげぇな、と。


 そんでもう一つ。


 やっぱりいまの子が作るテレビって、薄型のやつなんだな、って。


 だって私、段ボールをもちろん箱の状態で渡したんですよ?

 我々の世代でテレビを作ろうってなったら、箱の状態で一部をくり抜き、それを頭からかぶるとかそんな感じですよ。ブラウン管ですもん。でも、この子達、ブラウン管を知らんのですよ! 


 そこが地味にちょっとショックでしたね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る