第416話 思い込み

 人間ね――いや『人間ね』って随分大きく出ちゃったんですけども、ここはちょっと範囲広めでお話ししようかと思いまして――そう、人間って、一度『こう』って思い込んだらなかなか訂正がきかない時ってあるじゃないですか。


 間違って覚えちゃった公式とかね、違うってわかってるのに正しいのを覚えられないというか。いやそれは私だけかな。


 私がよくやるのは、歌詞の一部分なんですけど、一番と二番を逆のまんまで覚えてしまって、「たしか私は逆で覚えてしまっているはずだ」と思い出したは良いけれども、いざその部分に差し掛かると「あらら、結局どっちだったかしら~ラララ~♪」になってしまう感じですね。


 きっとね、私だけじゃないはずだと確信をもってここまで書いたわけですけれども、私だけだったらどうしましょう。

 まぁ、思い込みってなかなか直らないよね、って話をしようと思うのです。


 布団カバーなんですよ。

 セミダブルのね、掛け布団カバーなんです。

 宇部夫妻はセミダブルのベッドで寝ておりまして、寒い冬は旦那を人の形をした特大ゆたんぽがわりにしてぬくぬくしております。え? 夏? 夏はもう勘弁してくれってくらい暑いですね。仕方ないです。シングルベッド2つも置けるほど広い寝室じゃないんでね。


 去年の秋くらいまで使っていた掛け布団カバーがですね、やけに大きくてですね、何か一部布団が入ってない状態と言いますか、カバーの下の布団がずれないように結ぶ紐(?)はほどけてたりしないんですけど、直しても直してもグイッと引き上げると、カバーだけだったりして。ぺらぺらのカバー部分しか掛かってないわけですから、肩が寒い寒い。ずーっと、何でだろう何でだろうて思ってたんですけど、そういえば、この掛け布団カバーを買う時に、セミダブルのサイズがなくてダブルを買ったとか、そんなのなかったっけ、って思いだしたんですよ。


 なぁんだ、そもそもサイズが大きいのね。じゃあ仕方ない仕方ない。


 って思ってですね、サイズもあってないし、だいぶ長いこと使ってるしで、いよいよ新しいのに替えようと思ったわけです。今度は、何か毛布みたいな素材のやつにしよう。そしたら、毛布がなくても温かいぞ、なんてね、そんな感じで新しいのを買ったのです。今度はばっちりセミダブル!



 で意気揚々と交換したわけです。


 が。


 これでめでたしめでたしであれば、わざわざエッセイに書かないわけです。こんなアラフォーおばさんが掛け布団カバーを交換しただけの話を誰が読むというのか。ここまで読んだ方、ご安心ください。ちゃんとオチはあります。


 で、どれどれと広げてですね、試しに寝てみたんですね。おお、ぬくぬく。これでこの冬もばっちり! ……と思ったら、やはり一部カバーが入ってない。というか、掛け布団の四隅とサイドについている『カバーの方についているであろう紐を通す部分』が何かおかしいんですよ。


 カバーの方には四隅と上下の真ん中辺りに紐があるんですが、布団の方に上下の紐を通す部分がないのです。どうやら、それがないせいで安定せず、中で、双子座のあのマークを横にしたみたいな感じになってしまっているということがわかりました。


 何、もしかして掛け布団の方に問題があった? ということはその紐を通す部分を作れば……?


 などと考えている時に気が付いたのです。

 あれ、この布団、脇の方に紐通し部分があるタイプ?


 ……違う。

 布団の向きが違うんだ!


 そう、私はずっと布団の入れる向きを間違えていたのです。柔らかい羽毛布団だったので、それでも何とかおさまるものですから、いまのいままでずーっと気が付かなったというわけでした。

 それまで何度も洗濯して取り換えていたのに、ずっと気が付かなかったのです。もうカバーは多少余るもの、みたいな認識だったのでしょう。もしやと思い前のカバーを確認したら普通にセミダブルのでしたし。


 のちに旦那に聞いてみたところによると、


「やっぱり? 道理でいつも足が出るなぁって思ってたんだ」


 と。


 いや、言って?!

 足が出てたなら言って?!

 確かにあなたは年中ぽかぽかしてるタイプだけども! 寒かったでしょうに!!


 いまは、ちゃんと全身ぬくぬくでございます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る