第259話 彼らと目を合わせてはいけない

 おっ、ホラーか?

 今日はホラーのお話なのか、って思ったでしょう? ご安心ください。いまのところ宇部家にホラー展開はありません。ホラーだったとしても、まったく怖くない感じになりますから!



 いや、子ども達の話なんです。

 もうね、わかりますよね? ネタがなくてですね。ここはいっちょ、ウチの『無限可愛い工場』の精鋭達に出張ってもらおうかな、ってね。



 いや、仕上げ磨きって一体何歳までやるんでしょう。少なくともウチの息子君はまだ仕上げ磨きしています。磨き残しが心配で心配で仕方がないからです。


 仕上げ用歯ブラシには、0歳~と書いてあった気はするんですけど、何歳までって書いてなかったような気がするんですよね。だけど、やっぱりブラシは小さめの方が磨きやすいし、ということで仕上げ用のものを買っております。

 男女それぞれの幼児用歯ブラシ(もう普通に5歳とかそういう子が使うやつ)と、0歳~の仕上げ磨き、これまた2色。ここん家、4人子どもがいるのかな、って。



 まぁやっていけないことでもないでしょうし、朝晩きっちり仕上げ磨きしてるんですけど、そう、問題は『誰がやるか』なわけです。


 まぁ可愛い可愛い子ども達ではあるものの、いささか面倒くさい時もありますし、手が離せない時もあったりするわけでして。


「歯をみてくださーい」


 でも、こんなこと言われてね、見ないっていう選択肢あります?

 いや、たまにありますけど。


 ちょっと前までは「しあげはパパー」とか「ママおねがいしまーす」ってご指名いただいてたんですけど、ここ最近はですね、目を合わせて来るんです。じぃっと。もの言いたげな目で。口の端からちょこっとよだれを垂らしつつ。拭け。


 で、視線と視線が重なり合うとですね。


「……じゃ、ママ(あるいはパパ)(ニヤリ」


 だから手が離せない人はもう必死に目を合わせないようにするわけです。

 けれど、可愛らしいくりっくりの目が……! せまる……っ!


 逃げられないわけですよね、結局のところ。


 

 あとまぁ似たようなやつで『突っ込んだら負け』というのもあります。

 ちょっと前に書いた『シットリモチ(第198話 モチの子より)』なんかがそうです。やることいっぱいあるし忙しいのに、ついついどこからか聞こえてきた不思議な声に突っ込まずにはいられないわけです。突っ込んだが最後、正座させられてそのショー(だいたいの場合エンドレスループタイプ)を見させられるというのに。


 だから、ここは一旦心を鬼にして……!

 あとで、あとでゆっくり聞かせてもらうから! 聞かせてもらうから!!


 ――イッチマンエンハ、サンゼンエンッ! イッチマンエンハッ、サンゼンエンッ!♪

 ――イッチマンエンハ、サンゼンエンッ! イッチマンエンハッ、サンゼンエンッ!♪


 ……イッチマンエンハ、サンゼンエン?!

 何その呪文。呪文?


 ――イッチマンエンハ、サンゼンエンッ! イッチマンエンハッ、サンゼンエンッ!♪

 ――イッチマンエンハ、サンゼンエンッ! イッチマンエンハッ、サンゼンエンッ!♪


 一万円は、三千円!



「違うよ!? 一万円は、一万円だから! ハッ、し、しまった!!」

「ママ~(ニヤニヤ」



 もうね、だいたいこのパターン。

 うちの子達、ママが突っ込まずにはいられないタイプってわかってるんでしょうね。


 おかしいなぁ、私、突っ込みの方だったっけ。



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る