第222話 猫の話をするしかないのに

 だってほら、222話でしょ。

 222ニャーニャーニャーですから。

 

 ただ、残念なことにね、私、猫を飼ったことがないわけです。姉が猫アレルギーでしたし。何より、ウチのダディが何ていうんでしょうかね、特別犬派と聞いたことはないんですけど、あのいかにもアメリカンな感じが好きというか、デカい生き物が最高! みたいなところがあって、好きな映画もハリウッド系なものですから、あの猫のちょこんとした慎ましい感じが合わないんですかね。


 俺は庭でとにかくデカい肉を焼きたいんだ! みたいなそんな感じの人間といいますか。実際は焼きませんけど、発想がアメリカン。デカければデカいほど良い、爆発も派手な方が良い。そんな感じ。



 さて、そんな『デカいは正義』でレトリバーの子犬をふらりと買ってきちゃうウチのパパンなんですけど、スーパーシャイボーイでして。私が結婚するとなった時もそりゃあ大変でした。


 それまで彼氏の『か』の字も出したことのない私でしたからね。だって彼氏なんていなかったんですもん。


 そんな次女が結婚相手を連れてくるとなり、大騒ぎですよ。東北の男を連れてくるんですよ。オイオイどんな色白美人を連れてくるんだと。


 とりあえず母親にどんな手土産が良いだろうって相談しますと、マイマザーは言いましたね。


「重いものを持ってこい」


 ――!?


 重いもの?


 気持ちが?

 ということは現金?


 ではなく、ずっしりしたものを、だそうです。よくわからないんですが、松清ダディは物理的な重さ=誠意と考えているようです。


 成る程成る程と。

 まぁ確かに、まずは軽いご挨拶といえどもぺらっぺらのクリアファイル一枚持参してきたらぶちギレるわな。そこはコピー用紙箱で持って来いやってなる。っていうかどうして文具で例えたんだ私は。

 

 というわけで、お酒が一滴も飲めない未来の義父のために旦那は瓶に入ったジュースのギフトセット的なやつを持参して、北海道の地に降り立ちました。くそ重てぇの。


 そして時は流れ、まぁそうなるだろうと思いつつも晴れて結婚が決まり(前回は挨拶がてら同棲の許しを得る的なやつでした)、さて今度はそのご挨拶だとなったわけですが、困るのはそう、手土産。


 前回瓶ジュースですからね。あれもあれでなかなかの重さでしたけど、ここで手を抜いてしまっては「こいつ最初だけかよ」って思われちゃいますから。じゃあどうする。やはり瓶ジュースの重さを上回らなくてはならないわけです。こんなことなら初回をあんこぎっしり系のお菓子にすれば良かった。気合い入れすぎたわ。


 どうするどうする。

 重いものって何だ?

 やっぱり液体? あるいはいっそ砂(砂利でも可)? セメント? セメントかな? 娘さんをくださいさもなくばセメントだ、って? 怖すぎる!


 いや、待てよ。あれがあるじゃない! 米だよ米! 何せここは東北、米所!!


 そんなわけで米で行きましたよね。

 さすがに30Kgとかではないですけど。


 普通送りますよ、米は。1Kgや2Kgじゃないんですから。

 それをこの兄ちゃん持って歩いてるんですから。スーパーの帰り道とかじゃないんですよ? スーツ着て、スーツケースがらがらしてんですから。それで米ですから。正気か、ってなる。


 まぁ、前回のご挨拶の時点でもう結婚するのは確定みたいなものでしたけど、やっぱり恥ずかしかったんでしょうね、ダディは家中をさりげなくさりげなく逃げまくり、ご挨拶をどうにか回避出来ないかと(「良いよ良いよ堅苦しいのは。もうわかってるからお父さん」みたいな)画策しましたが、「お婿さんが遠路はるばるスーツ着てお米まで持って来てるんだからアンタも覚悟決めなさい!」と母に叱られ、あえなく御用となりました。


 はい、というわけで逃げまくるダディが猫っぽかったってことで、この貴重な222回を終わらせていただきます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る