第205話 大きな声じゃ言えないけど
よく言うじゃないですか、お酒の席とかで出しちゃいけないのは政治の話と好きな球団の話って。
いや、探せばまだあると思うんですよ? スター・ウォーズは何から見たら良いのかとかね、一番強い仮面ライダーは誰だ、とかね。
ちなみに私はこのエッセイでも(たぶん)述べた通り、スター・ウォーズはよく知りません。私の中の『スター・○○○○』は『スター・トレック』ですから。もちろんそこも黙ってないと危険です。
「えぇー?! スター・ウォーズ見てないのー!? それ人生半分くらい損してるよ!」
って言われちゃいますから。いやぁ残念ながら私の人生結構充実してるんで、これで半分損した状態だとしたら、スター・ウォーズ見た時点で、私破裂するんじゃないですかね。おっかないので遠慮しときます。
一番強いライダーは『仮面ライダーブラックRXのバイオライダー』だと思ってるんですけど、これも賛否ありそうなので黙ってるのが吉です。吉です、というか、そもそも私はほぼ飲み会に参加しません。平和。私の肝臓は平和だ。
それでですね、この『お酒の席』というある程度の無礼講が許されつつも、全力ハグも出来ないような関係性の人達と飲食を共にする場において、うっかり出すと争いの元になりかねない話題のひとつに『米』っていうのもあると思うんですよ。
と言いますのも、いまからもう10年以上も前のことです。新卒で入社した会社でですね、飲み会があったわけです。そこは全国に支社があることもあり、社員は日本全国から集まっておりました。が、そこは北海道の支社だったからか、やはり北海道~東北出身者が多かったのです。
そこで、東北出身の同期が言ったんですね。
「北海道のお米って美味しくないよね」と。
お前それ、
その場にいた全員がそう思ったはずです。
しかし、いまでこそ北海道にも美味しいお米はありますが、当時は確かにそうでもなかったんです。
でも、そのお米を食べて育った我々は正直「そんなに美味しくないかなぁ?」というのが本音ではありましたが。けれど、その子は何といっても東北民なのです。内地のことはほぼ知らない私(だけじゃなく道民って内地のことあんまり知らない気がする)でも『東北=米が美味い』というイメージはあります。
いま恐らく新潟の方は「おいちょっと待てや」って思ったことでしょう。まぁ、落ち着いてください。恥ずかしながら白状しますけど、私は新潟を東北だと思ってました。私が特別馬鹿なんだと思いますけど、私の友人でも何となくそう思ってた、という子は何人かいます。やはり類友。
まぁとにかく、東北の人間はさぞかし美味い米を食っているんだろうから、北海道米なんてお口に合わねぇんだべなぁ、あっはっは、くらいでその場は流したんです。
が、時は流れ。
ご存知の通り(?)、私、異動しましてね。東北に。一ヶ所じゃないんですよ。いまのところに落ち着くまでに3県巡ってますから。計4県住んでますから。
で、その子の故郷にも1年ほどおりまして。『北海道米ディス事件』も忘れ、旦那とご飯を食べに行った時のことです。
普段は決して出てきた料理に文句をつけない我々が、ちょっとこれは……、と箸を置きました。白米です。北海道米をディスったあの子の故郷のお米です。
基本的に、出来立ては何でも美味しく食べちゃう私が、特に白米はおかわりしがちな旦那が、この一杯だけで良いかな、と箸を置いたわけです。
もしかして、安い外国産のお米とか使ってる? いや、店内のポスターにでかでかと『○○○○○○(さすがに伏せます)使用!』って書いてるしなぁ。
もう混乱しましたよ。
あんなに自信満々と北海道米をディスってくれたけど、確かに美味しくなかったかもしれないけど、こちらもどっこいどっこいのような……? それとも店主、今日の水加減ミスった? それもどうなのよ。
でもちょっとほっとした部分もあるんです。
私、基本お米って全部美味しいって思ってて、旦那と結婚してからずっと彼の郷里の『○きたこまち』を送ってもらって食べてるんですけど、『○きたこまち』だから美味しいのか、それともお米はもともと何でも美味しいのかちょっとわからなくなってたところだったので。
良かった、米にも味の違いはあるのね。当たり前だろ。
あとはまぁ……よそのお米が美味しくないと思っても、とりあえず黙ってようと思った次第でございます。黙って食べます。
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