第158話 心に残る言葉
心に残る言葉って言ってもですよ。
その、何て言いますか、格言とかね、そういうんじゃなくて。
『人を良くする、と書いて【食】』ですとか、
『女が喜ぶと嬉しい』ですとか、そういうんじゃなくて。
『にんげんだもの。 みつを』とかね、そういうやつでもなくて。
これはですね、某ハンバーグレストランでのお話なのです。
学生の頃、私、そこでバイトしてまして。
従業員は安く食べられるとか、そういうのは特にないんですけど、まぁ多少、サラダを気持ち多くしてくれるですとか、マヨネーズとかドレッシングも調節してくれるですとか、パフェのソフトクリーム部分を一巻き多くしてくれるとか、そういうのはありました。
だからってわけでもないんですけど、やっぱり休憩となりますと、ほとんどの人はそこの食事を注文するわけです。
するとですね、年下の先輩がね、迷ってるんですよ。
「どうしようかなぁ。普通のやつも良いけど、チーズのやつも良いなぁ」
ってね。
で、私はだいたいチーズハンバーグセット(仮名)なのでほぼ迷わずにチーズをorderする(どうしてここ英語になったんだろう)んですけど、その先輩は悩んでましてね。
あれですよ、若い子特有のやつ。
カロリー気になっちゃうやつ。
彼女当時まだ10代だったんですけどね(私は20代)、若い子には若い子のカロリー事情があるんですよ。
ここで、
「若いんだから食べても太らないんじゃないですか?」
何て言ったらアウトですよ。
宇部さん、アウトー! デリカシー0! 乙女の気持ちわかってない! 退場! いや、それは困るな。閉店まで残業!
例えその時20代でもね? あなただって10代の頃はあったでしょう? 食べても太らないタイプの友達は確かにいたけど、その子陸上部とかだったじゃない。あなた、食べたら食べたでしっかり太るタイプだったじゃない!
ってなもんでして。
まぁ、若い子の方が多少太っても痩せやすい(おばちゃんと比べて)ですし、多少ふくふくしてる方が可愛い(おばちゃんと比べて)ってのもあるんですけど、まぁ、その辺は良いです。だんだん悲しくなってきたから。
で、結局彼女は和風ハンバーグセット(仮名)にしたわけですよ。
ハンバーグの上に、大葉と大根おろしが乗ってるやつです。うん、見るからにヘルシー。
余談ですけど、ええ、このエッセイ、80%くらいは余談で構成されてるんですけど、実は私、この『大葉』が苦手でして。梅干しに入ってるのと青じそドレッシングは好きなんですけど。
まだ天ぷらは良いです。回避出来るから。
ただ、ササミカツとか、中に入ってるの梅だけかなと思わせといて大葉も巻かれてたり、和風スパゲッティには刻んだやつが乗ってたりと、これは回避出来ないんですよねぇ。困るー。
そんなわけで、大根おろしは好きなんですけど、この大葉があるばっかりに、そこの和風ハンバーグ(仮名)は食べたことがないんですよ。でもその先輩、何だかんだで毎回それ食べてるんです。だから結局、「あぁ、いつものですね」っていうわけでして。
でね、先輩が言ったわけですよ。何かこう、ため息混じりに。
「……和風ハンバーグ(仮名)ってさ、おろしに大葉でさっぱりヘルシーな感じするけど、そのおろしと大葉の分のカロリーはプラスされてるんだよね。結局普通のハンバーグセットが一番カロリー低いよね。何か騙されてる感じ」
って。
もうね、最高だなこの人って思いましたね。そこに気付くか? 高校生で! って。
いや、ソースとか違うでしょって思った方がいるかもしれませんので補足しますと、そこのお店、基本のソースは1つというか、他のファミレスみたいに『ソースが選べるよ!』って感じじゃないのです。
だからあれだ!
カロリーを気にする女子!
普通のハンバーグを食え!
おろしと大葉の分太るぞ!
え? そういうこと? 絶対違うでしょ。
とにもかくにも、このお言葉、しっかりと私の中で生きています。ただ、それでも私は食べたいものを食べますけど。
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