第139話 先人の教え

 先人ってすげぇなって。


 そう思いません?

 

 若い頃はね、「そんなの迷信でしょ?」みたいな感じでね、軽んじてたんですけど。

 最近になって思うんです。あれ? 彼らの言うことってもっともなんじゃない? って。


 当事者になるまで気付けないんですから、まじチンパンジーですよ。マジパンジー。マジまんじみたい。


 

 いや、ここ最近ですね、何かずーっとお腹の調子が悪くて。

 休みの日は何かもうトイレに籠ることが多くてですね。またしても爽やかな朝の時間にそんな話かよって思われたと思うんですけど、すみません、そんな話です。


 ただね、私、ずいぶん前にも書いたんですけど、『鉄の腹』っていうスキル持ってるんですよ。その話を読んでいない方のためにざっくり説明しますと、まぁだいたいどんなものを食べても腹を壊さない、っていう。それだけなんですけど。6つに割れてるとかじゃないです。あくまでも強いのは内側の話。


 だから、私がやられてるとなりますと、同じものを食べている家族はもっと酷いことになっていないとおかしいわけです。旦那辺りが先陣を切っているはずなんです。たぶん病院送りレベル。


 にもかかわらず、私だけ。

 

 考えますよね。

 私、家族に隠れて何か食べたかな? って。


 まぁ、色々お菓子とかコーヒーとかは食べたり飲んだりしてますけど、アレルギーとかそういうものないはずだし。

 それにどれも最近買ったものだから悪くなってるはずがない。

 子ども達のお菓子に手を付けたとかそういうのなら、罰が当たったとか、そういうのもあるだろうけど、ちゃんと私のですから。


 もうこうなりますと、次に考えるのは、悪い病気ですよ。

 いま若い人でも関係ないですからね。

 どうしよう、病院行った方が良いのかしら、ってね。

 瞼を閉じると子ども達の顔が浮かんできたりしてね。まぁ、そのまま目を開けたら目の前にもいるんですけど。


 で、さすがに1週間続いたら、次の休みに病院行こうかな、なんてビクビクしながら風呂に入っていた時にね、ピンと来たんです。思い出したんですよ、先人の言葉を。


『暑いからって腹を出して寝るなよ』って。


 何なら、この台詞、毎日子ども達にも言ってるんですよ。暑くてもお腹にだけはタオルケットかけなさいねって。


 そういえばここ最近暑くて、湯上りにシャツを着るのが嫌でそのままパジャマ着てたな、って思い出したわけです。パジャマの裾って基本ズボンにインしないよな、って。でも、別に腹は出して寝ていない。誓ってそんなことはしていない。


 だけど、たかだかシャツ一枚で? ってね。思うじゃないですか。


 でも、その時の私は正直藁にも縋る思いでしたから。

 瞼を閉じればね、子ども達の顔がね――、ってまぁ、目の前にいますけどね、わざわざ閉じる必要ないんですけど、まぁとにかくこの子らを置いていけないわけですから。


 というわけで検証しました。


 本当にシャツなのか。シャツのせいなのか!?

 私の『鉄の腹』はそんなに外部からの攻撃に弱いのか!?


 デデン!!

 


 


 ……シャツのせいでしたわ。

 ちゃんとシャツ着て寝たら、全然お腹痛くないんですよ。

 私のお腹ってたかだかシャツ一枚ないくらいで冷える構造になってたんですね。守ってくれよ脂肪。


 いやまじ先人ってすげぇなって。



 そして、私は馬鹿だな、って。

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