第140話 例の異世界転生
第138話の異世界転生話が私の中で思いの外バズったので、ちょっとあらすじだけでも書いてみようかなって。さすがに全部は無理そうなので、せめてもあらすじというか導入というか、そんな感じだけでも。
『クジラに転生したら、俺の彼女の足が10本ある件について』
俺の名前は
待ちに待った夏休み初日である。
今日こそ俺は、小学生の頃からずっと好きだった幼馴染み、
そこで、昔よく2人で遊んだ近所の海岸(岩浜)に彼女を誘ったのである。
しかし、夕日をバックにいざ(シチュエーションも完璧)、と思ったその時。
予期せぬ高波によって、俺と顕子は海(日本海)の中に引きずり込まれてしまったのだ。確かに少々波の高い日ではあった。インパクトを求めすぎたのが敗因だ。
あ、これは死んだ。
さようなら、俺の人生。
俺、享年17歳かよ。
そう思っていたのだが。
しかし、俺は目覚めた。
目覚めた――けれども。
何かがおかしい。
何がおかしいって、そもそもここは海の中だ。
なのに、息も苦しくないし、むしろ快適である。
ははん成る程、これが巷で話題の異世界転生ってやつか。
俺はきっと水中でも活動出来る生き物に転生したのだろう。
俺自身はその読者ではないものの、俺の親友である
延太郎は新作が出る度にバイト代を全額それらにつぎ込んでいるようで、2階にある彼の部屋は近々床が抜ける予定らしい。その延太郎が特にお気に入りなのが、この『前世の記憶を持ったまま異世界に転生し、チートスキルを駆使して無双する』というやつなのだ。
回を重ねるごとに登場する女の子達は髪や瞳の色、それから耳の形なんかもまちまちと種族は様々であるが、とにかく皆揃いも揃って美少女で、最初こそ親の仇だとか、勝手にライバル認定し、アナタは私が倒すだのと突っかかって来るにも拘わらず、ラッキースケベに次ぐラッキースケベ、それからよくわからない成り行きでの共同作業などなどにより最終的には主人公のことが好きになるのだという。つまり、ウハウハのハーレム展開である。
無双の爽快感に加え、現実ではまず味わえないモテモテっぷりを味わえるというのが、最高らしい。
だけど俺には顕子がいる。
どんなに美少女が波のように次々と押し寄せてこようとも、キャー泳人くーん、とおっぱいをたゆんたゆんさせてこようとも、だ。俺には顕子がいるのだ。
「泳人君!」
ああ、顕子の声が聞こえる。
こんな海の中で聞こえるなんて、幻聴だろうか。
いや、待て。
もしかして顕子もこの世界に?!
確かに一緒に波にさらわれたしな。ありうる展開だ。
そう思って辺りを見回す。
テレビで見た海の中というのはもう少し明るかったような気がするのだが、辺りは少々薄暗く、視界も不明瞭だ。
「泳人君、後ろよ!」
その声を聞いて、くるりと向きを変え――た時に気が付いた。
えっ、俺、クジラじゃん? うひょー、マジ!?
――うわっ、いま口の中に何か魚入ってきたんだけど! ペッ! ゥオーエッ! ペッ! ああ駄目だ、これ完全に喉の奥に入ったわ。ごめん魚、食べる気はなかったんだけど。
ていうか、俺クジラなのによく俺だってわかったな顕子。
これもう完全に運命じゃね。
クジラになってもわかるって、これ完全に運命感じる流れじゃね。
「顕子! どこだ!!」
薄暗い海中で、俺は愛しいその名を呼んだ。
と、それに呼応するようにこちらへと伸びて来たのは、顕子の白い腕、ではなく――、
「何だこれ!?」
確かに白い。白いけれども。
長い。長すぎる。それに多い。もうどう考えたってこれは10本くらいある。
あと、何、めっちゃくっついて来るんですけど。吸盤ついてるでしょ、これ。
だとしたらもう確定だわ。
顕子、タコかイカじゃね?
「泳人君! つっかまえたっ!」
その言葉通り、俺は、彼女の(ざっと数えた感じ)10本の足によってしっかりと拘束されてしまった。うっかりぽかんと口を開けていると、相変わらず命知らずの小魚達が俺の喉の奥へと特攻していく。お前達の人生それで良いのか。
とにもかくにも、俺の異世界生活はそんな感じで始まった。
のちに確認したところによると、顕子はタコでもイカでもなく、『クラーケン』という種族らしい。
これは、クジラに転生した俺と、クラーケンに転生した彼女が、この広い異世界の大海原でさまざまな人(ほぼ魚)と出会い、心を通わせていくハートフルストーリーである。
さぁ、ここまで書きました。
書いてわかりました。
はい、私には異世界転生もの無理です!!
もう、ここから先、無理です!!
とりあえず、ここまで書いたら満足しました。お粗末様でした。
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