令和元年7月

第132話 それが我が家の味的な

 あるじゃないですか。

 そういうの。


 我が家ルールというか、それの料理バージョン、みたいな。


 私が実家にいた頃、スパゲッティといえば、すでにソースが混ぜられたものを差しました。中華鍋みたいな形の、だけど全然テフロンな大鍋いっぱいに、ミートソース缶と+ケチャップやら何やらの隠し味的なもので味付けされた見た目は完全にナポリタンのそれが、実家のスパゲッティだったのです。


 アルデンテは中に芯がなんてジョークもあったりなかったりするらしいんですけど、実家の麺は完全に『無いデンテ』でして、顎の力が弱い子どもやお年寄りにも優しい仕上がりとなっていました。ていうか、これ細いうどんじゃね?


 先ほども言った通り、見た目がナポリタンなもので、恥ずかしながら、私はずっとミートソースとナポリタンはほぼ同じものだと思ってたりして。


 でもほら、例えばレストランとか、あるいはおままごと用のプラスチックのおもちゃなんかでも、スパゲッティってあくまでもオンザソースっていうんですか、何でここ英語にしたのかわかりませんけど、とにかく混ざってない状態じゃないですか。『スパゲッティ』っていう料理名でイメージするのってむしろそっちじゃないですか。


 だからね、私もわかってるんです。


 ああいうソースが混ざってないやつはあくまでもレストランとかそういうお店で出されるおしゃれなやつで、家で食べるやつは混ざってるもんなのだと。わかってるんです。何かこう、よそ行きっていうか。そういうことでしょ? って。


 お友だちの家で夕飯ごちそうになるってなって、メニューがスパゲッティだったりした時にそれが混ざってなかったとしても、


「やっぱりお客さん(私)いるからね。そこはそうなるよね」


 なんて思ったりして。


 だからまさか、普通はそんながっつり混ぜた状態で配膳しないとか、びよびよののびのびになった残りのスパゲッティが翌朝も登場したりしないなんて思わなかったんですよ。

 当時母親は一体何g茹でてたんだろう。本当に中華鍋サイズの鍋いっぱいにあるんですよ。米だったらこれ一升炊いてるな? って感じ。


 昔はね結束パスタなんて売ってませんでしたから。あのどんぶり勘定なママンのことですから、一袋まるまる茹でたんだろうな……。うん、まぁ、そういうところ確実に似たんですけどね、私。


 で、現在。

 宇部家ではソースを混ぜずに出してます。混ぜるのも勉強だから! と何やら恰好良い感じで言ってますが、単に面倒なだけってのもあります。


 いやー、しかしまさか3歳と6歳にミートソースとナポリタン以外のスパゲッティを食べさせるようになるとはなぁ。子どもってスパゲッティといえば赤いやつをリクエストすると思ってたんですけどね。保育園で出るんですよ、赤くないスパゲッティ。


 おしゃれかよ。平成キッズはおしゃれさんかよ。昭和キッズはミートソースかナポリタンって決まってんだよ。


 だからね、夕飯をスパゲッティにしようかしらってソースのコーナーに行くじゃないですか。え? 手作りしないのって? ハハハご冗談。手作りするのはナポリタンまでだぜ!!


 というわけでね。

 イタリアーンのコーナーに行きますとね、主に娘が張り切るわけです。真っ赤なむちむちほっぺで小さなお鼻をふすふすさせながら指差すんですわ。


「娘ちゃん、このクリームのがたべたい!」ってね。


「はいはい、クリームのね(さりげなく『スパゲッティ』に誘導する)」

「ママ! 『はい』は一回でしょ!? わかった!?」

「……はいよ」


 ……私なんで3歳に怒られてるんだろう。

 

 そんで、娘監督の采配によって、男チームはミートソース、女チームはカルボナーラになりました。


「ママと娘ちゃんおそろいねっ(о´∀`о)」


 ってにこにこしてるから言えなかったけど、ほんとはママ、ミートソースが食べたかったんだ……。


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