第106話 そのお塩はどうする

 ウチの両親はですね、母親が酒豪で、父親が下戸なんです。極端。父親はその代わりに(?)ヘビースモーカーで、母はまったく吸わず。

 だから、小さい頃の宇部は、「そっか! 大人って、煙草かお酒か、どっちかなんだ!」って思ってました。


 まぁ、どっちもイケる大人と、どっちもイケない大人も存在するというのは、親戚のおっちゃんで知りましたけどね。厳密にはお酒は激弱でしたけど。タコさんウインナーみたいな色になる。


 そんなこんなで、小さい頃から煙草にはまったく憧れない私でしたけれども、お酒にはね、ちょっと憧れました。

 だけど、ビールではありません。


 ワインとか、カクテル。 

 つまり、色のきれいなやつです。ほら、一応アタイ、女子なんでね。てへっ。


 大人になったら、こじゃれたバーのカウンターで、


「マスター、いつもの」とか、

「私にぴったりのお酒をちょうだい」とか言っちゃったり、


 あるいは、


「あちらのお客様からです」とか、


 そういうのやるんだろうなって。

 カウンターの上をグラスがシャーッて滑ってきて、それをパシィッて受け取るんだろうなって。

 あんな摩擦0のカウンターって本当に存在するんでしょうか。それともグラスの下に車輪でもついてるのかな。それか実はエアーホッケー方式かもしれません。


 ただ、まぁ、まさかこんな未来が待ってるなんて夢にも思ってませんでしたよね。

 もういっそ「マスター、アイスミルク。ダブルでね」の世界。私の師匠はコブラだ。サイコガンは心で撃つのよ。


 いや、コブラの話がしたいんじゃない。

 今回私の槍玉に挙げられているのは、カクテル。その中でも、『ソルティドック』なのである。あのグラスの縁にぐるーっとお塩がついてるやつ。おしゃれ。ソルティドッグに限らずとも、お塩がついてるやつは他にもあるんでしょうけども、もちろん私はカクテルなんて有名どころしかわからないので、もうソルティドッグにすべて被ってもらうつもりです(何を?)。


 初めてソルティドッグを見た時、私が真っ先に思ったのは、


「あのお塩、どうやってつけてるんだろう」


 でした。


 もうね、発想が貧困というか、頭が固いというか、単なる馬鹿っていうか、ちょっとずつちょっとずつそーっと乗せてるんだと思ってましたから。

 それがあなた、塩の上に逆さにしたグラスをぐいってするだけっていうね! もう逆転の発想! まぁ、たぶん小学生でも思いつく方法だと思いますけど。


 それでですよ。

 その次に思ったのは、


「そのお塩は最終的に全部舐めるのか」


 でした。

 だって、その塩味もプラスしてのカクテルなんでしょ? 一口目は確実にお塩と一緒にいただいてるでしょ? 二口目は!? 二口目以降はどうするの!? そーっとずらして舐めていくの!?

 

 だってね、考えてもみてくださいよ。

 カクテルですよ?

 しかもバーとかで飲むやつですよ?

 完全に偏見ですけど、たぶんこれって女性が飲むやつでしょ?(男はみんなビールかウィスキーだと思ってる)


 てことはね、確実にすっぴんじゃないの。

 こじゃれた服を着て、ばっちりメイクもしてるの。

 落ちない口紅? あんなの迷信だから。落ちっから! 開発したやつ、もっと真面目に実験しろ! ありとあらゆる人間で試せ! 

 大丈夫、色なしのグロスだから? それはそれで悲惨なことになるだろ! グラスの周りが謎の粘液でべったべただぞ? 唇でかたつむり飼ってる(もしくはかたつむり怪人)疑惑が浮上して百年の恋も冷めるわ!

 拭けば良いでしょって? 何で? 指で? じゃあその指はどうすんの?

 ティッシュ持ってないのって? いやあるけど、そんなこじゃれたバーで常に拭き終えた(そしてまだ使う予定)のティッシュずーっと握ってろってこと? それに絶対周りのお塩も拭いちゃうじゃん! 私にはその自信がある!


 かといって、最初に口をつけた部分だけしかお塩が舐めとられていなかったら(別に舐めとってるわけじゃない)、それはそれでバーテンダーさんががっかりしそう。俺、結構頑張ってお塩ぐいぐいつけたんだけどな、とか、この塩味も含めて俺のソルティドッグだったのにな、みたいな。


 どうするのが正解なんでしょうね。

 いや、ググればね、きっとグーグル大先生が教えてくれるんだと思う。


 だけど私は調べない。


 なぜって?


 ネタがひとつ減るでしょうが!!


 そんなわけで、このエッセイを書き続ける限り、私はずっとアホな子なのです。


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