第377話余裕が気に入らない
「守人ね、そんなの久しぶりにみたわ」
歌うように楽しそうに言う女、目線を無意識に奪われてる事に気付き我に返り鑑定を試みるも、何も見えず、最近では敵に対して殆んど仕事をしなくなった鑑定先生といわざるを得無い。まぁいいさ、こいつを殺さなければならない。
上空のあの島に来る事ができて人語を解する存在、契約で縛るくらいすれば良いだろうが、今の所信頼なんてない。であれば消してしまうのが早い。我ながら悪党の様な。いや、悪党の思考回路だよな、そうと決まれば、銃を取り出し、女に向けて引き金を引く。
「面白い玩具だったのね、人にしては良い出来だと思うわよ?」
乾いた炸裂音が鳴り止むと彼女はなんでもない様にそう良い、その手から弾丸をポロリと落とした。少年漫画でも昨今あんまり見ない光景だ。冗談じゃ無いどこの戦闘民族だよ。
それから色々持ち変え試したが大口径のマグナムも散弾銃もマシンガンも当然の如く無駄、最終的にガトリングガンや対物ライフルも同じ結果で終わった。腹立たしい事に相手は微笑みながら次は無いのかと言わんばかりに悠然と立っている。お前など敵ではない、そう言われてる気さえする。
「気はすんだ?」
「いや、いま一つ試してみるとするさ」
これだけ余裕でいてくれるならいつものような歌無しではなくゆっくりと歌わせてもらおうか。元々はそういう術式だ制度も変わる。その前にダガーを一本と刀を一本、最後に良く使う剣を一本空間庫から出す。術式が終わってからでは取り出せないからな。
相変わらず女は興味深そうにこちらを見ている。俺が歌い出すと自分は観客とでも言わんばかりにその場に座り込みこちらの歌を聴いている。何処までも敵ではないのだろう。
短縮も何も無しで歌い終えるとそこには原初の空間が広がる、特殊な力等一切存在しない、当然科学という概念すらもだ、生き物が生きる為の機構が備わっていないファンタジー方面の生き物は例外なく即死するある種の猛毒、まっとうな生き物の機構があったとしても、訓練をしなければ立つことすらままならない、これならあの美しい顔に敵意の表情を取らせる事が出来るだろう。
俺は剣を鞘から抜いて女の方へ構えた。
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