第376話侵入者
目の前に広がるのは当然移転先、連れて来た面々もある程度は予想していただろうが流石に驚いた表情を浮かべている。
「賽の字、良く来た。その者達が件の代表か?」
「ああ、そうだ。基本的には街から少し離した所に屋敷を置いて住人を街へうつそうと思う。無論そちらの話し合いで変わる部分もあるだろう。俺自身は俺に害が無い限りは受け入れるし、手伝おう。あとはそろそろ来るであろうルイと話し合って決めて欲しい」
「あい分かった。それで賽の字はどうするんだ?」
「やる事が多くてね、ここで失礼させていただくとするよ、必要もあるまい?」
「今回の話は賽の字を主軸に動いておる。当然利権や報酬の話だってあるのだぞ? 商人としてそれでいいのか?」
「今回はクライアントから貰う分だけで十分だ。利権の分手厚く保護してやってくれればそれで良い。それじゃ失礼するが話し合いがすんだらルイ越しで良いので連絡を頼む」
「忙しい奴だな相変わらず。たまにはゆっくり話し相手になるくらいしていっても良いのだぞ?」
「近いうちにそうしようまたな」
俺は転移符を起動する。急ぎの予定がある訳ではない。しかし、緊急の事態かもしれない。念話符越しに伝えられたのは何かが来ていると言うヘスからの通達だ。
すぐさま現場へ向かうとその場に立ち尽くした。見惚れた、ただただ見惚れた。妖精達と戯れる見たことも無い女の姿に、美しい。他に形容する言葉が浮かばない。体形があの女領主のように豊満という訳でもない。顔が好みという訳でもない。ただその場に調和した姿が美しい。
魅了を疑ったが周りを見るにそうではない。妖精を見る分にもただ無邪気にいつもの様に過ごしている。爺さんとヘスは俺と変わらない心中だろう。少なくてもあれは侵入者だ、どのような存在であれ対処しない訳にはいかない。向こうもこちらに気付いたようだ。
「ここは俺が治める土地だ、何用で来た」
いつでも戦えるようにポケットに手を入れた状態で空間庫経由して銃を握る。
ごめんね、と妖精達を膝から下ろし立ち上がるとこちらを見て微笑む。
「そう、怖がる事は無いよボウヤ。ここをどうこうしようという訳じゃない、ただ久しぶりに見に来ただけよ」
「久しぶりに?」
「前来た時はあんな可愛らしい子達はいなかったのだけど、あれはあれでありね。所でだけど、その両手の玩具で何をするつもりかしら? 貴方素直に語れるタイプじゃ無さそうだし。場所を移しましょうか」
その台詞と共におれの視界は切り替わった。多分転移符と似たナニカだ。一面海に囲まれた砂浜あとは何も無い。この世界の美女はとことん俺にとって厳しい存在らしい。
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