第370話連行

 部屋を出て魔術を解除。その後転移符で拠点へ飛ぶ、今回は出し惜しみ無しだ。この状態の女性をあまりこの状態にしたくない。


「ショルいるか?」



 大声で呼ぶ。




 ドタドタと慌ただしい音と共にショルが部屋に入ってくる。それと同時に少し蔑んだような目でこちらを見る。




「精霊を救出した。悪いが風呂に入れてやってくれ、男の俺がやる訳にもいかん」




「精霊様?それにそっちの男は?」



「話は後で聞く。まずは頼めるか」



 精霊をショルに受け渡し、すぐに転移符を起動する。
















 城下町へついた俺は、王を引き摺りながら城へと向かう。後ろから雑音が聞こえるが知った事ではない。





「おい、アンタ。その男はどうした」



 呼び止められて当然か。




「こいつは罪人だ。魔王様に直接届けて処罰してもらう、具体的には精霊様の件の当事者だ」



 その言葉で周囲の空気が変わる。おれでもわかるコレは怒りだ。精霊は愛されていたのだろう、感情と共に流れ出たマナは周囲を息苦しい空間にしている。




「気持ちは分かるが、一番怒りを感じているのは魔王様だ、違うか? 今は抑えろ、まずはこいつを裁くべき者の前に連れて行く。それに良い知らせもある。それは魔王様に聞くが良い」




 雑音が何を喚いてるか聞いたせいで周囲はこの男が何者か理解したようだ。それに数人はミューと俺が一緒にいる姿を見ている者もいるせいか。そこから先は騒ぎを聞きつけた野次馬の海が割れるように俺を通してくれる。




 城へ着くと騒ぎの報告が入っていたのだろう、俺はすぐさま通された、当然兵士が数人囲むように着いて来るが、それは仕方がない事。



 謁見の間につくと怒りを隠そうともしない魔王が鎮座していた。



「そなたは仕事が速いな、まさか敵の王を連れて来るとは思いもしなかったぞ?」




「他の怪しい連中は皆殺しにした。残りはコレくらいだ。精霊はしばし待て、コレをどうするかでも考えてる間には連れて来るさ」




「そなたは少し落ち着け。私には分かるぞ、上手く隠してはいるが内心怒り狂う寸前であろう?」




 指摘されてまたやらかしたと内心毒づく。ポンポン転移符は人前で使うわ、城下町では余計な事を言うわ。本当におれは愚かだな。



 大きく深呼吸をして心を少しばかり落ち着ける。



「魔王、気を使わせた。だが、俺に時間が無い事も事実、さっさと終わらせたいんだ。しばし待て今から迎えにいってくる」




 逃げるように部屋を出て行った。自分でも何故この行動に出たかはよく分からない。


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