第368話赤く染まる

 不愉快だ、税で物を奪い過ぎて餓死なんて事はこの世界だけじゃなくてもある事だろう。だが、人間は生きようと足掻く生き物だ。やりすぎれば暴動が起きる。これは当然の事態だ。暴動まで行かなくても強盗やスリ等の犯罪は劇的に増えるもの。



 飢餓状態まで追いつめた体制にも問題があるのだ。それを鎮める方法がコレであるならば無法の方がよほど美しい社会ではなかろうか? 弱者が生きる為に抗う事もできず。罪を犯す事すらも出来ない、周囲の臭いと相まって吐き気が増す。



 護衛にココを急いで抜けたい吐きそうだと伝えると、走ってくれた。幸いそう長い道のりでも無く短い時間で走り抜けた。




 城に着くとすぐに謁見の間に通され護衛共に質問される。先に護衛、そして俺だ。




「さて、勇者殿にも聞こう、コレは絶対者としての命令だ。嘘偽りは許さん。何があった?」



「はい、お答えしたいのは山々ですが、事が事です。人払いをお願いします」



「少しおかしい。勇者よ跪け」



 俺は跪いてみせる。



「よし、問題ないな。立て、そして勇者を除く命令順位10位以下の退室を命じる」



 護衛共々、姫君を含む殆んどの人間が部屋を出た。同時に俺は室内を覆う様に結界を展開する。



「さあ、勇者よ何があったか述べよ」




「こんな玩具じゃ命令は聞けないな」



 マシンガンを取り出し、横一線に掃射する。ある程度倒れたら、大口径の銃で頭を一つ一つ撃ち抜いていく。はじけ飛ぶと言う方が正しいだろうが。



 残るは玉座で震える王一人。



「妙な行動をすればお前もアレの仲間入りだ。理解は出来るな?」



 コクコクと頷く王。



「闇の精霊は何処にいる?」



「封印の間に」



「この精神作用のある術式はどうやれば解除できる? 強引にやっても構わないがその時何が起こるかは想像して楽しんでくれ」



「封印の間その物が術式なのだ、核である精霊を出せば消える」



「思ったより素直に喋るな、他に隠している事があるだろう? 玉座も真っ赤に色変えしたいのか?」



「貴様が殺した者共がいなければ瓦解する術式だ、わし一人ではどうにも出来んのだ。ここまで答えたのだ、わしも聞きたい。何故術式を逃れた、そして牙を剥いたのだ」



 俺は指輪を外し、王に放り投げた。

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