第365話ミューは人気者

「念の為に聴いておくが囚われた精霊は命に問題が出るような状況ではないな?」



「弱っている可能性はあるかもしれませんが、死が早々に来る状況では無いと思います。攫われて既に10年以上経過してるようですし」



 救出に速さを求めないのであればやはり先に魔王と会うべきだろう。邪魔なら排除すれば良いし、話がわかる奴なら精霊をそこに預ける形にすれば良い。その場合俺を面倒に巻き込んだ上層部やその他諸々を処分する必要がある。



「では魔王とやらのところへ行こうか、ミューとやらは面識があるのだろう?」



「魔王だけじゃなくてみんなお友達なのだ」



 それはありがたい、面会までスムーズに済みそうだ。


「俺が先ほどの方法で移動するからミューは場所を案内してもらえるか?」



「了解なのだ」



 そういって俺の頭に座る、警戒心の無さといい、色々心配になる。このおっさんだから無事で済んだと言っても過言ではないだろう。



「おっさんもそういう訳だからまた座ってくれ」




 そこからは早かった。一気に高度を上げて風除けの結界、それからはミューの案内で城上空までは簡単にこれた。ここまでは何一つ障害がなかったが流石に城の上空には感知の結界が張られていてそのままでは行く事が出来なかった。


 それでも城の外側に転移符を落とすように設置してそこに転移で降りる。騒動を起こさない為だ。





「それにしても貴方は反則ですね。元も世界であっても理不尽な便利さです」




「残念ながら、これらは全て元の世界の技術だ、秘匿されて俺らのような一般人に知る事もないだろうがな」




「やはり空を飛んで荷物を」



「それ以上言うなら口から鉛玉を食らわせてやる」



「すいませんやはりネタが分かる人との会話が嬉しくて」



「実際にあんな真似をすれば隠匿する連中に消されるさ、目撃者ごとな。そんな事より、ミューを連れて正面から行こうと思うが、二人とも大丈夫だと思うか?」




「ミューが居れば絶対に大丈夫なのだ」



 偉いだろといわんばかりの表情とポーズをするお子様精霊。



「最悪逃げ切れそうなのでそれで良いのでは?」



 俺頼りか。



「正門まで案内を頼むぞ、ここからは徒歩だからな」



 一応ここでは人という種は敵なのだが、ここの住民も似た連中は居る。こう言うとき一番大切なのは、堂々とする事だ。そう堂々と。



「ミューちゃんこれ食べてな」



 こんな声を掛けられる、一度や二度ではない。相当な人気者、商店街の看板猫とかそんな印象だ。



「アンタがミューちゃんを連れて来てくれたのかい? 魔王様も心配してるから早く連れてってやんな、安心させてやってくんな」



 商店街の看板猫とその飼い主、そして迷子を送り届けた人こんな感じだろうか?



 あれよあれよと手荷物を増やしながら門へ着き、城へすぐ通され、そこでも荷物を増やしていく、魔王の元へ着くころにはおっさんもおれも両手に荷物を抱えていた。


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