第356話邪悪な妖精もいるらしい

 10分は時が過ぎただろうか流石に心配になってきた時。



(待たせたね、準備が出来たよ)



(任せて正解だった、それだけ長い時間潜るのに自信はない)



(そりゃそうさね、そういう場所を一緒に探したんだからね)









 転移すると洞窟の中だ、後ろを見ると小さな池の様になっている。どういう原理かは知らんが水の中に空気がある洞窟があるようだ。



「こんな場所があったんだな」



「元々は小さな洞窟だったんだけどね。精霊様が広げてったのさ。その話も聞いて見ると良いさね、こっちだよ」



「一応訊いておくが何の精霊だ?」




「大地の精霊様だよ」


 これは無理かもな。大地の精霊を空に連れ出すとか、誘うだけ誘うか。



「そうか」



「ほら、見えてきた。精霊様、お客人を連れて来たよ」



 大地の精霊・・・凄い実ってるな。何処とはあえて言わないが、控えめに言ってモデルさんだ、褐色の肌に銀色の髪、アメジストカラーの瞳、うちの精霊様とは天地の差である。何処がとはあえて言わないが。




「そなたか、久しいな。人の客人とはあまり気分の良い物ではないが、そなたが連れて来る客人なら歓迎しよう、それに随分な色男のようじゃしな」



「精霊様の好みなのかい?」



「いや、そういう意味ではない。他の精霊から好かれておるからの、神のもいくつか混ざっておるようじゃが、定命の身でどうすればそれだけの縁を築けるのやら」



「そういう縁はあっても、伴侶になりそうな相手の縁はなくてね。そう言う生まれなんだろうよ。始めまして大地の精霊、俺はダイス。必要ならアンタを人の手がほぼ届かない俺の領地へ招待する」




「いきなりじゃな。じゃが、成程、成程、寵愛や親愛に似たそなたへの加護はそう言う事か。それで、なにが狙いじゃ」



 そんなもの無いんだがな。実際この行動に利は無い。そのまま言うか。



「無いな、しいて言うなら気に入らないからだ」



「ほう、詳しく聞かせよ」



「元々は狩られて行く妖精を見て気に入らなかったからってのが始まりだったか。気付けば一番力を注いでやっているがな。利は結果的にあったが、無くても同じ事をした」




「嘘には見えん、お主、異常じゃぞ? まずは同族を優先するのが普通じゃろうて」



「人なんてのは勝手に蔓延るもんだ。興味はさして無いね」



 精霊とショルはそう語る俺をまじまじと見ているがどうしたのだろう?



「お主は人として何処か壊れておるな、それでも悪意が無いのは良くわかった、その招待受けるとしよう、自由に動きまわれる地なのじゃろう?」




「ああ、そうだな。誘っておいてなんだが、いくつかの決まりと確認をしたい事がある、構わないか?」



「最低限必要な事じゃろうて」



「確認の前に、ショルはこの事を他言しないか、今すぐ耳を塞ぐか選べ」




「今更秘密が増えた所でねぇ? アタイはそんなクズじゃないよ」




「ならば良いさ。大地の精霊よ、俺の領地は空に浮かぶ島だ。アンタはその性質上そこに住んで問題ないかってのが一番の懸念だ。決まりは和を乱さない。合う、合わないは当然あるだろうが、幸いそれなりの広さがある島だ。距離を取ってくれさえすれば良い」




「当然の懸念じゃな、空に浮かぼうが地がある限り問題は無いの。次に和を乱すほど愚かじゃないわい。道理を弁えぬ愚か者にはそれなりの処置はするが、そのような者がおるのか?」




「穏やかな連中ばかりだよ。妖精は少々騒がしいが、そう言う物だろう」



「アレはそうあるべき者じゃ。その言い方では邪悪な方ではないと見た、それならば処置も必要なかろう」



「邪悪な方?」



「連中は人の幼子と大差無い。良くも悪くもな、わしの様に妖精を従えぬ者には関係の無い話じゃが、どの精霊の元にいるかでその性質は如何様にでも変わる」



「邪悪な思想を持つ精霊の周りの妖精もそうであると」



「然り、命を玩具にして遊ぶとかな、そういう道理を弁えぬ者がおらんなら構わん。どの道ここの維持と食料の確保もそろそろ限界じゃったしの」



「それじゃ、今すぐ向かうが構わないか?持って行く物があれば運ぶが?」




「奥に私物が少しばかりある、それを頼もうかの」




「了解した、案内を頼む」


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