第347話上陸
さて、転移符はセットした。施錠と結界の設置も問題ない。次の行き先は魔族の国、今回の仕入れた物をまず卸す、面倒なので王の側近らしき見覚えのある人物に丸投げした。
作物が育つ地盤こそ手に入れど、まだ食料の配給分は足らないはずだ。
「俺は王を信頼している。なので査定や金額も王に委ねるとしよう」
信頼?そんな物はない、これは圧力だ。ふざけた態度を取ればそこまでだ、わかってるよな?そういう意味だ。
「勿論、この恩には必ず王も報いるでしょう。数日頂ければ伝達から報酬の準備まで必ず」
「一月くらい。いや、二月かもしれないがまたココに来るまでには掛かる。急ぎすぎる必要はない」
ーーー
それだけ言うと急いで戻り、屋敷のトイレを借りる名目で自身がここに居るとだけ確認させてからまた、転移符で外へ出る。
空の旅をしてやく10時間、ようやく陸が見えた。しかし、今までの何処よりも監視が厳しい。わざわざ灯の魔術を複数人で使用して夜闇を照らす徹底振りだ。
徹底振りは良いのだが。高高度からの進入は想定されてないのだろう。案外簡単に進入できた。気になるのは何故空へ警戒が及んでいたかだ。もしも、空へ到る技術があるのであれば潰しておきたい。
それはともかくまずは転移符の設置だ。そろそろ戻って食事を取る等をして顔を出す必要がある。
転移符に隠蔽を施してから屋敷へ戻る。
ーーー
部屋から出ると護衛の男と共に老人が一人立っていた。
「商人様、食事など如何でしょうか?」
「気を使わせたな。そちらも客に何もしないでは問題か」
「はい、お客様をおもてなしするのも私共の仕事ですゆえ」
「それは失礼した。大仕事が立て込んで帳簿の整理が忙しかったものでね」
温和な笑顔で執事のような老人は苦笑しながら。
「ええ、そうでしょうとも、商人様との取引の後は私も同じような状態でした。財政を考えると嬉しい悲鳴ですがな」
そう言って笑う。こちらへの気遣いのような物がわかる。俺が居やすいように話を選んでくれたのであろう。
「それは良い事だ。だが、これから付き合いが増えれば本当に悲鳴になるかもしれない。計算が得意な部下を今のうち補充するのが良いのかもな」
「いえいえ、それこそやりがいがありますとも」
元気な爺さんだ。不快感も無い。それに俺の様な若造に一歩下がって接する器量もある。キライじゃないタイプの人間だ。
「それじゃ、お言葉に甘えて食事を頂こう」
「こちらになります」
誘われるがまま屋敷の奥へ向かう。
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