第335話偉そうな女
地図を買い付け、文字通り飛びまわったが、どの鉱脈も酷い有様だった。様々な種族がいたがほぼ全てが奴隷。死体の処理をせず、病気が蔓延してる場所すらある始末。
地獄と言うに相応しいだろう。ここでの地獄はそろそろ終わるだろう。隠蔽を施しながら術式を埋め込んでいく。淡々と坦々と。移動しては繰り返す。
この国も面白い所ではない、あの女領主が治めていた街がどれだけ優れていたのか実感した程だ。いや、あれがこの世界では異端だったのかもしれない。
あと思ったのが、この島国は非常に豊かだという事。もしも俺がここの王であれば戦争して奪うなんて愚行は絶対にやらない。これだけ肥沃な土地があり、食料に余裕がありそうなのだ。魔族と友好関係を築き、食料を売る。それだけで無駄な死者も、無駄な労力も減るのだ。
3日が経ち約束の時間になる前にはほぼ全ての場所に術式の設置を終了した。ついでなので数箇所人の手が入ってないような場所にも設置した。
ーーーー
商会周辺が随分とにぎやかだ。一瞬警戒したが。見るにそういう雰囲気ではない、忙しそうに物を運んでいる。
約束の時間通りに向かうと受付の態度があからさまに違う。ここまで違うと清清しいまである。すぐに商会長を呼びに向かった。
当然商会長は来るが、おまけに随分と美人さんが横についている。美人と言ってもまだ中高生と言った年齢だろう。
「商会長、隣の女性は誰だ?」
「客じゃ、商会長に頼んで貴様と会わせて貰ったそれだけじゃ」
客ならいいさ。
「何をお求めで? 俺が持つ商品でそちらの要望に応える物があれば売っても構わない」
「この石じゃ」
女は俺が売った石の一つを俺に見せる。ピンクダイヤだ。
「これならまだ売る事も出来る。だが、安い物じゃない、買えるのか?」
「お前が商会長に要求した物を用意した。寧ろ貴様のマジックバッグに納まるか心配する程じゃ。それより貴様、石を売るだけではないな。装飾物としての完成品も当然あるのではないか?売らなかっただけで」
「数はあまり多くないが、ある。だが、その宝石と同じで値段はかなりするものだ?お嬢さんに買えるのかな?」
商会長は俺とのやり取りを気が気じゃないような雰囲気で見ている。この女は権力者の娘かなにかだろう。この赤を基調としたドレスも派手ではあるが。良い物であるのは一目瞭然だ。
「わらわが欲しいのは、指輪、ティアラ、腕輪、ネックレス、イヤリングじゃ。当然この石でじゃ」
ピンクがお気に召したのね。とりあえずアレを見せて反応を見てから決めるとしよう。
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