第315話どう見ても異界人
宿の食堂に向かうと一人の男がいた。黒髪黒目、ホルスターに銃。コレだけで俺からすれば殺すに値する。だが、まだやらん。
俺に呼び出す理由が一切分からないからだ。今現在の俺は金髪碧眼、肌の色こそ日本人のそれだが、似た見た目の奴なんざいくらでもいる。
「待たせた、すまないが俺はこの土地に知己はいない。当然貴殿も知らん。なんの用だ?」
周りの人間が唖然としている。なにかまずい事をいったか?
「まぁまぁ皆さん、この方が言う通り外から来た方です。私を知らなくて当然じゃないですか」
男が回りに話すとそれもそうかと、元の雰囲気に戻る。余程の有名人なのだろう。例の発明家の可能性は高い。そうであれば楽なのだが。
「行商人さんは非常に良い品質の商品を扱っておられる。今日パンを食べて違いに気付き仕入先を頼って来た次第です」
成るほど筋は通る。確かに香辛料、小麦、塩を今日は取引した。取引中の世間話は俺の情報収入源でもある。しかし、もし敵対してこいつが来た場合は町に入った時点で俺はマークされてた事になる。
「もし、よろしければ当家にも売って頂けないでしょうか」
「私は行商人、商売とあらば喜んで」
「では今から当家で商談をしましょう。御都合が悪いようであれば明日でも構いません」
「今すぐいこう、商談は早い方が良い」
敵陣にお誘い頂けるなら乗り込むまで。最悪切り札で無力化すれば良い。
店を出て先導する男を鑑定するが、当然見れない。最近の奴は阻害魔術やスキルが当然の様についてやがる。勇者(笑)が懐かしい。
「申し訳ないですが鑑定は通じませんよ」
「有名なのに知らないのでせめて名前くらいは把握しようと思ってね」
「それは失礼しました。東雲 明です。行商人さんのお名前をお聞きしても?」
「ダイスだ、苗字は無い」
他愛の無い事を話しながら目的地に進む。商品の生産地を聞かれたが、企業秘密だと言って誤魔化した。この辺の地名など殆んど知らない。今日得た情報では確実にボロが出る。
そして目的地に着いたが。驚く程何も無い、物はある。品のいい調度品が嫌味にならない程度に。ここで言う何も無いは防衛機構やトラップの事だ。
「さて、ダイスさん、神についてはどう思われます? 誤解無いように言いますがこの周囲の宗教家が崇める神という訳ではありません。全体です」
ありゃ?もしかして変な宗教勧誘?
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