第313話飛ばされた先

「成果は消す」と言ったがあの後飛ばされた先の光景を見て頭を抱えた。



 下水道、水車、魔石を動力とした蒸気機関車。そして水車を動力とした様々な物、それが広域に張り巡らされている。



 人は何故文化を技術を進化させ続けるか、それは暇が出来る事の要因もひとつである。効率化により人間社会のピラミッドは一段底上げされる。




 例えば畑を耕す行為一つでも人力から家畜へ家畜から機械へと効率が上がっていく。そうすると更に効率を上げる為への思考する時間が生まれる。一番下の仕事に従事した者も一段上の仕事に移行する。




 当然天才達の偉業あっての事だが、俺が思うにここまで来ると人は止まらない。ここはより強国になり、まず商人と宗教家での汚染と搾取が他に広まり、次に本体での暴力による略奪が始まる。




 その時の戦いで人はより技術を進歩させ激化させる。それだけなら教科書でも開けば良い。前の世界とこの世界最も違う事は魔術が魔術師によって秘匿されてるか否かだ。この世界では当然のように魔術は使われている。




 魔術師達が安易に魔術を行使しないからこそ前の世界はあの程度で済んだとも言えるし、そうでないとも言える。科学の進化を一番阻害していたのは魔術そのものなのだから。




 なにが言いたいかって?魔術と科学の共存なんぞおぞましい状況なのがここって事だ。俺自身人の事は言えないが、秘匿はしているつもりだ。




 どうするべきか、施設を破壊した所で復興するだけ。技術者や資料を消すのも現実的ではない。




 町並みを見ながらため息を付く。




 そして俺はもっとも見たくない物を見かけた。それは、学校だ。しかも、中へ向かう学生の服装がバラバラである。これは身分を問わず通う事が出来、さらに労働力である子供を出すだけの余裕がある事も同時に意味する。




 人の目線では最高の場所だろう、だが俺は人の進歩停滞、あるいは遅延が好ましい。その目線では最悪の場所だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る