第310話中から鍛えよう

 さて、神をとっちめに行くとするかね。





 目的地についたは良いが・・・神?いいやあれは完全に歌のお兄さんだ。周りの子供達に囲まれて楽しく歌う。これは完全にN○Kの○さんと一緒だ。




 良く見ると幼いドライアドまでいるし。この空気は俺には辛い。結局は皆が満足するまで待つ事にした。




 北風小僧とか懐かしすぎるな。



「何をしみじみしてるんだい?君の記憶から貰ったときのおまけみたいなものなんだけど」



「急に背後に出るな。で?その辺もう少し詳しく聞きたいんだが」




「関連した記憶は引き出すときについてきやすいそれだけだよ。今回の場合は学んだ曲だろうね。幼少期とかの教育で得た曲とかじゃないのかな?」



 魔笛は流石に小学校の終わり辺りだが他はそう言われれば納得できる。



「まぁ理解した。それで何故ここに居るんだ?」





「楽しいじゃんここ、こんな穏やかな土地は非常に希少だよ?ある程度の生きる条件を満たされて外敵もいないこの場所独自だよね。そうそう君が作った街だけど神々の観光スポットになってるよ。外観と機能性を備えた街を作るとか今の人間では無理だろうから物珍しいだろうね」




「は?いや、何度もあそこへは行っているが神なんて見てないぞ。それに使った跡もない」




「そりゃそうだろう。あくまで観光に行っただけなんだから。見るだけさ」



「ここには来てないんだよな」



「基本はこないだろうね。ここは賽の神の管轄だし許可なしでは来ないんじゃない?」



「お前はどうなんだ?」



「君が紹介を頼んだんだろう?当然賽の神は許可するさ」



 それもそうか



「そろそろ始めようか、君へのレッスンを」



「よろしく頼む」


「まずは、そうだね。あの木陰に向かおうか、そこで寝そべるか座って」



 言われるがままに動き、木に寄りかかりながら座る。すると一瞬目の前が真っ暗になりまた元の視点に戻る。



「はい、そのままこっちまで歩いてきて」



 神の言うまま俺は数歩前に出る。



「はい、後ろを向いて見て」



 先ほどの木の方向を見ると・・・俺が座っている。俺?



 目を丸くして驚愕していると、腹を抱えて神は笑っている。





「いい反応だね、今君は魂だけの存在だ。アレは空の入れ物だね。君が怒り出す前に説明すると、肉体の中で練習するより効率が良い。その一言に尽きるんだけど。まぁあれだ中から鍛えるとでも思ってくれれば良いよ。終ったら問題なく戻れるから心配も要らないよ」



 突っ込もうと思った事全部先回りされた・・・



「あの歌のための練習となるとこの姿じゃないか~ちょっと待ってね」




 神の背丈が縮み、胸の辺りが風船の様に膨らんでいき。顔つきは元々中性的だったのが女性のそれになる。




「美人ではあるが、キモッ」




「一応、今は美の神の側面もあるんだけど酷くない?」




「男から女になる工程が気持ち悪い」



「成る程自分では見たこと無いからね。成る程成る程。まぁいいや僕の声を真似するつもりで続いて」



 神が歌いだし、俺もそれに続く。だが、森のクマさんはないだろう。妙な羞恥心に精神をガリガリ削られていく。



「気づいているかな?今君は魂と言えど女性の音域まで届いてる」



 言われてみれば確かに。




「これを魂と肉体それぞれでやるんだ。そうすればいずれは到達できると思うよ」




 これは神だから出来る練習って奴か。




 その後肉体でやっている時妖精達も乱入してきて合唱になったのは言うまでもない。


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