第293話正面から
その日の夜、俺は吸血鬼の領地に向かっている。情報の収集の目的と辺境伯の件を伝える為だ。俺の代理にルイが向かう。約束の場所にいきなりお子様の見た目のおっさんが来る。事前に連絡無しだと問題になる事間違いなしだ。
夜特有の優しい明かりを滑るように進む。一応これも滑空となるのだろうか?ファンタジー作家が今の俺を見たら抗議がきそうな気がする。いっそ寝そべって進めばそれっぽく見えなくもないか?
くだらない事を考えているうちに目的地が見えてきた。山をそのまま都市に変えたそんな印象を受ける都市だ。頂上から城、立派な屋敷。それに続いて普通の家、宿舎のような物。まさにこの都市の縮図なのだろう。
ある程度近づいたので高度を下げる。今回は乗り込むのではなく、尋ねるのだ。顔つなぎの役目と言えど外交に関わるのだ正面から行かざるえない。
門の周囲に明かりはない。夜目が聞く種族なので必要ないのだろう。
「そこで止まれ」
まだかなり距離があるのに気が早い事だ。俺は言われた通り止まる事にする。
駆け寄る門兵達を見るとステータスは思考を除き俺より数段上。普通に遣り合えば一捻りと言った所だろうか?
「貴様・・・人間か?」少し考え込んで更に続ける。
「人間がここまで来るだけでも相当な危険があっただろう?その危険を侵してまで何故ここに来た?」
「ここ数日でそちらの王子がゴミ掃除に行かれましたよね?私も丁度同じ目的で鉢合わせましてね。その時少しお願い事されましてね。それについての報告と連絡と相談です。いきなりよそ者のいう事を信頼しろなどと言いません。私はここで待ちましょう。話さえ届けば火急に謁見が叶う内容だと私は確信してますゆえ」
門兵は連絡役だろう一人だけ空へ駆け出し。残りは俺の元へ残った。
「貴殿が客人である可能性がある以上、このような所に待たせるわけには行かない。兵宿舎で申し訳ないがそこでお待ち頂きたい」
「御配慮感謝します」敬語を使うのは疲れる。今は我慢だ。
待つ間、色々雑談したがこの門兵意外に話がうまい。吸血鬼の事など色々教えてくれた。吸血鬼は魔力の吸収能力に優れていて。攻撃手段の一部が魔力吸収と言うだけで血は吸わないらしい。味覚は人間に近いそうな。
「一つ疑問があるのだが聞いても良いですかね?」
「勿論です。貴殿の話は中々に面白い。私の権限内の事であればなんなりと」
「俺は貴方達と話し、吸血鬼という種族が紳士的なもので、人間より数段上の力を持つ種族だというのは理解した。だからこそ疑問なんだ。何故最初あそこまで警戒したのかと」
「成る程。ではお答えしましょう。まずは得体が知れなかった。魔物がそこらにいる地域で人間が一人で踏破してここまで来る。この時点で並みの人間ではないですよ。次に、これはすぐ疑いが晴れたので問題はないのですが。私の国はある人間の国と敵対関係にあります。顔の刺青ですぐ見分けがつくのですがね」
「どのような刺青か聞いても?」
「頬の辺りに青い線を入れてますね。一般市民以上であれば一本はあるそうです。線無しは奴隷だそうです」
ザ・蛮族って感じだな。多分これが今回の敵なのだろう。
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