第268話続・受難

 正直に全てを話しました。敵対の意思は無く、防衛の結果だと分かって貰える様に必死にです。童子に必死に訴える大人の図。正直虚しいです。しかも私はエルフ長妙の種族年齢だけならこの子の10倍は生きているでしょう。



「うんうん、そういう事ならダイス君の所に案内してよ。殺してはいないんでしょう?お姉さんの処遇は彼が回復してから、お姉さんと話し合ってそれ次第だね」



 そう言って微笑む童子は通常なら可愛い子供のはずですが、私には気まぐれな死神にしかみえません。



「分かりました。私が間借りしている部屋があります。一緒に向かいましょう」



 道中色々と聞かれたし聞いた。この童子は男の子だったらしい。名前をルイ。驚く事に成人しているらしい。前の世界では子供もいたという。異世界に生まれ変わった事実よりそちらの方が驚きよ。



 一定の警戒こそしているものの話している分には可愛らしい少年だ。強烈な出会い方さえしなければと付け加えよう。そんなこんなで私とルイ君は目的地に着いた。



 ルイ君はダイス見て触る。怪我の具合を見ているようだ。



「こりゃ酷い。まぁダイス君ならこのくらいしないと止まらないだろうけどね。あまり自命に重さを付けたがらない。ゆえの今までの行動なんだろうけどね」



 そう言うルイ君の姿は老成した賢者のそれかと見間違う空気を纏っていた。



「さっそく治療、と言ってもダイス君の所有物の一部を使うだけだけどね」



 そう言って取り出したのはポーション。このレベルの傷となると効くとは思えない。それこそ最近歌った、お姫様の奇跡に出てくるそれが必要。



 ポーションを強引に口に押し込むし振り掛ける。無茶苦茶だ、だけどその効果は信じられない。外面的には骨折による変形、内出血による変色等々が見る見る回復している。まるで回復経過を超高速再生している映像を見せられている気分。



 さっきまで動かす事すら怖くて出来ない状態の彼は、今や目を覚ますのを待つだけ。どれほどの霊薬があればこの奇跡は叶うのだろう。私は呆然とその光景を見ているしかなかった。



「ダイス君は連れて帰るよ。お姉さんはダイス君が来るまでここを拠点にしててね。逃げても構わないけど。その時は問答無用で殺すから覚悟してね」



「分かりました」



 辛うじて出た言葉がこれ。ルイ君がお札を取り出しどこかへ消えるのを見届けると私はその場にへたり込んだ。

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