第254話酒盛り

 やる事を終えた俺は真っ直ぐ自宅へ戻る。農業の時間だ。



 そしてある程度形になってから気付いたのだ、妖精あいつらに農業とか無理じゃないか?ヘスになら任せようもある、彼女の指示で妖精が動けば多少はなんとかなるだろう。しかし、彼女の指揮でどこまでやれる?



 精々一反とか二反。大体そういう種族じゃねぇしな。畑を広げるのは止めだ、今の所五反ほど形になっているが、作る場所と休ませる場所を考えれば丁度良いのかもしれない。



 となれば必要なのはあまり手の掛からない食物、量は取れなくても数でカバーすれば良いのだ。この地は肥沃かつ気候も良い、となれば果実だ。今から色々な木を植えて、この地に合う物、出来ればあまり時期を開けず収穫できる様にしたい。



 林檎モドキと洋ナシモドキは既に見ている。まずはそれの入手、それから伝手を使って他の果樹の調達だな、まぁ根ごと転移でもってくるとして、2~3年様子を見ればわかるだろう。



 そこから、苗をあちこちに植えて・・・気の長い話だが致し方ない。そうと決まればまずはガウの所に行くとするか。



 会いに行って何をして収穫は何があったか? 結論から言おう、収穫はあった。マナが濃い所に分布する果樹で一年中実を付け、味も良い。問題はその場所とその果樹の性質だ。



 その木は魔物とも精霊とも言われる、高度な知識を持ち、更には攻撃手段まで持つ。並みの冒険者では歯が立たず、幻影系の魔術も使用できるらしく、入手が非常に困難だそうな。




 そこまで聞いた所までは良かったがガウの酒が悪いほうに回ってしまってそれどころではなかった。娘とはまだギクシャクしているらしい。それでもようやくまともな話を出来るようになってきているようだが。




 後はルイ絡みで総長に振り回されてとか、色々な愚痴に付き合わされた。基本的には飄々としてクールな男だが。ここ一年か二年はしんどかったのだろう。俺が一部関係があるし、素直に聞き手に回るとしよう。




 俺の秘蔵のブランデー(ギリギリの熟成期間)の味見なんて言い出したのが悪かったのもある。2年物だが前の世界ではギリギリだ、Voだったか?まぁ安酒に部類する。出来れば10年は熟成させたい。



 自分で作った物の(ツマミ)実験台にしつつ夜は更けて行く。



 潰れて果てたガウに毛布をかけ、スロートに食事代を渡す。スロートは「殆んど持ち込みで許されるなんてダイスさんくらいの物ですよ、僕達もご馳走になりましたから良いですけどね」と苦笑いしていた。




 確かに非常識だわな。無論悪いと思ったからこいつらの分で良い酒を頼みもしたし、それで勘弁して欲しい物だ。



 認識の差も少し埋まった。主に食文化のだが、生ハムなんかはダメのようだし、逆に甘い物はある程度受け入れられる。無論生魚なんて以っての他だ。




 カルパッチョとか生ハムは西洋寄りなイメージなだけに残念ではあるが、食中毒や寄生虫を考えれば当然である。



 次の行動は決まった。生きた果樹の特性の観察と勧誘だ。

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