第226話状況把握

「さて如何したものでしょうか」私は一人そう口にする。記憶に欠損の後。そもそも体が別人のそれである。視界が高いし筋肉も付いている。昔欲しかった物である。


 どこから手を手をつけて良い事か。この体で何をしていたかは分かりませんが、酷使の仕方が異常でですね。確か空間庫に使える物があったはずですね。



 空間庫に接続したは良いが、これは私の物ではありませんね。これは困りました、どうしようもありません。とりあえずはこの空間庫に何か無いか探してみましょう。



 見覚えの無い金貨に食料。転移符に見覚えのある金属を使用した剣。ここに留まるのもあまり良くないですし、移動しましょうかね。一応安全確認でパスを通して転移符の先を見る事にした。



 丁度人気に無い滝の近くに設置してあったのでそこに飛ぶ。



 体力も限界なので結界と隠蔽を施して自身に睡眠の魔術をかけ、眠る。



 どの程度眠ったのだろうか。適当に空間庫から食料を取り出し栄養を取る。次に見たのは念話符だ。枚数もそう多くは無い。接触を試みたい、一つ一つ確認すると一つだけ記憶にある相手がいる。父親である。なにかおかしいと思っていたのだ。



 術式が余りに見慣れている物ばかり。転移符然り、念話符に然りですね。



 私はいてもたってもいられず念話符を起動した。



「急にどうしたんだい?ダイス君。計画になにか支障があったのかな」



「一度顔を合わせて話す必要があります」



「急に丁寧になってどうしたんだい?いや、深刻そうだね。楽園に向かうよダイス君もそこで良いね?」



「楽園とは何処でしょうか?記憶に欠損があってわかりません」



「あちゃー精神汚染が進んだかぁ。治療の必要があるね。転移符は分かるかい?」



「はい」


「では五重陣の書いてある転移符でを使うと良い。使う事は出来そう?」



「問題ありません」



「では楽園で待ってるよ」




 ある程度事態がわかってしまった。今の私の意識その物が夢幻のようなものらしい。責務も果たし、消えるだけの私に与えられた束の間の夢なのだろう。ダイスさんには悪いが今しばらくこの体を借りるとしよう。

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