第207話ギルド、襲撃に合う

 もう夜か。拠点に着いてため息を漏らす。考えてみれば最近は蛇足が過ぎる。いいや。甘えが過ぎるのだな。らしくない事ばかりしている気がする。



 少しばかり気を引き締めないといけない。さて、爺さんにはこっちに来るように連絡をした。見せる必要はあるが目立つ必要は無い。そういう意味では時間帯的にも丁度良かった。



 拠点の屋敷を出てギルドに向かう途中妙に騒がしい。どうにも暴漢がギルドに乗り込んで暴れた様だ。撃退した様だが。怪我人も相当数いるらしい。



 滅多な事は無いと思うが急ぐとしよう。



 ギルドは見るも無残な有様だった。半壊、辛うじて建物しての役割を果たしてはいるが。何時倒壊しても不思議ではない。



 総長は俺を見つけるとこっちに走ってきた。それこそ神速と呼ぶに値する速度で。



「ダイス、ポーションはいまあるかい?」



 俺は空間庫から取り出すと。奪い取るかの様に。いや奪い取ってすぐにギルドの中に消えた。思った以上に、マズイ事態のようだ。



 俺も当然追いかける。中で見たのは血まみれのガウとクリート。それを見守る職員。そして壷の中身を二人の口に無理やり流し込む総長の姿だ。



「とりあえずはこれで死にはしないだろう」そう言いながら総長は残りのポーションを二人の頭の上からぶちまける。確かに振りかけても効果はあるよ?絵面は重症患者に追い討ちしてるようにしか見えないがな。



 総長の言葉に職員も様々な反応を見せている。力が抜けてへたり込む者、泣き出す者。喜ぶ者。反応はそれぞれではあるが、二人は部下に恵まれているらしい。



「ダイス君色々と聞きたいことがあるだろう。場所を移そう。いや、待て。約束の迎えに来たのか?」



「そりゃそうさ。俺としても面倒事は早々に片付けたいからな」




「ならば話は早い。まずは依頼を終わらせると良い。私も同行しよう。話はその後でも遅くない」



 俺は頷き。速やかに約束の場所へと総長と依頼人2人を連れて行く。



 約束の場所に着くと既にそれは居た。依頼者も総長も言葉が出ないようだ。それもそうだろう。相手はドラゴン。この世界の生態系でもほぼ頂点ではないかと言われる一角だ。



「私はダイス。友の経由で私の願いを聞き入れて頂き感謝します」



「小さき者よ我はあの巨壁の英雄に頼まれただけの事。あの者には借りがあるでな。それを少しばかり返しただけの事。件の者はそこの女子供の2人で間違いないな?」



 今こいつ、絶対笑いかけた。後で問い詰めてやろう。


「間違いありません」念の為ステータスで確認するが、問題ない。



「ならば早々にわが掌に乗るが良い。我もそこまで暇で無いでな」



 なんか大物感溢れるキャラを作りやがって。絶対に弄り倒してやる。しかも念話で(わしを笑い殺させる気か?その喋り方は似合わな過ぎる)だ畜生。



「ではダイスとやら。巨壁の英雄に確かに盟約は果たしたと伝えておけ」



「必ずや」



 ドラゴンは飛び去った。



「ふぅ。ダイス君は肝が据わってるね。私は気が気では無かったよ。巨壁の英雄の事も気になるけど。先にギルドで何が起こったかだけ説明しておくよ。ああ、勿論ポーションはちゃんと返すからね」



 話しはこうだ。件の国が一気に魔物問題を解決とまではいかないがクリアして早々に権力争いに発展。そしてあの赤子に魔の手が伸びたという事らしい。



「いやいや、いくらなんでも早すぎでしょうに。ギルドが定期的に間引いてようやくある程度の魔物被害を食い止めてたのにそれをこの短期間で自力だけで解決は考えにくいでしょうに」



「もし、それが個人の力が大きいとしても?」



「心当たりが?」



「ああ。さっき撃退したばかりだけどね。彼はアルト月に愛された男なんて呼ばれてるね。何でも月が出ている所であれば、普段の何倍もの力が発揮できるとか」



「何倍あろうが、総長相手なら逃げ帰るほか無いって事ですね」



「いいや、二人の支部長とで消耗が激しかったのだろう。実際どうなるか私にはわからないよ」



「それで、これからどうするおつもりで?」





「当然潰すさ。許せるわけが無いだろう?これを話したのは君の助力を欲したからだ。隠すなら構わないが君は、一個師団規模での能力を引き上げるスキルを持つと踏んでいる。それを持って協力して欲しい」



 情報の出所は・・・エルフのあれだよなぁ。それ以外で使う事なんて無いし。






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