第179話ダイス呼び出される

 風の噂にあの人の良さそうな甘い王が処断されたと聞いた。あれから時間は少し進み俺はまたギルドに来ている。総長に呼び出されたのだ。



「で?なんの用でしょうか?」



「まぁまぁそんなに嫌そうにしないでよ。こちらもゴタゴタで色々あるんだ。中心は君なんだよ?」



「必要とあれば雲隠れするが?向こうの大陸での商いにも興味があるしな」



「その点は心配してないよ。正直あの技術を売って欲しいくらいなんだがね。検討してみないかい?」



「検討するよ。無論結果は却下で。世間話はいい、そろそろ本題に行こう」




「ではいくつか提案を。ひとつダイス君の力をある程度で良いから知らしめる。これは抑止力的意味合いが大きい。最早君は一部の人間か格別の評価を受けてしまった」




「予想は付くがどういう事だ」




「予想通りでしょう。今回の件、ダイスさんが発端となってますが私の言葉としては、あくまできっかけであの国からの撤退は元々視野にあったと。ですが額面上に受け取らない人間も多数いました。特に出所不明のポーション。これを血眼で捜している連中なんかは特に」




「俺が力を見せればと言われてもな。しがない商人に大した事は出来ないですよ」



 肩をすくめながら無理無理と手を振る。



「そうですか?私の私見ですが貴方は一国の城に正面から乗り込めるだけの力があるのではないですか?最近瓦解した教国の近衛兵の死に方とダイス君を襲った騎士達の死に方が類似してるんだがね。どうやったらあんな倒し方ができるのかな?」



 同じ手段を多用しすぎたか。あの乱戦の中良く見ている。ギルドの情報網。少しばかり甘く見ていたようだ。



「偶然とは恐ろしいものですな。所でその死に方とは?」



「実を言うとですね。私はあの日ダイス君をつけてました。当然護衛の意味ででしたが」



 全く気付かなかった。伊達に総長なんぞやってない事かな。こりゃステータスも隠蔽されてると見たほうが良いな。




「その割には加勢の一つもなかったですが?」




「危なければ加勢しましたとも。それまではダイス君の実力に興味がありましたし。傍観させて頂きました」




「感想は?その位聞いても罰は当たらないだろう?結局盗み見られただけで俺としては大損害だ」




 これがハッタリかどうかは聞けばわかる。もしハッタリなら有耶無耶に出来なくもないはずだ。




「まずは。そうですね、軽減系のスキルでしょうか?見受ける限り半減、もしくはそれ以上。羨ましい物です。そして壁際に誘い出した後に使った魔術なのですかね?アレを見た時は王にひれ伏す罪人を連想させましたね。実際あれはどういう物なのでしょう。害がないなら体験したいとも思いましたね」



 完全に見られてるなこれは。まずはこいつをどうにかするべきなのでは?



「おお、怖い怖い。私は争うつもりはありません。ダイス君とは共生関係にあれるのが一番儲かりますからね。なにより、新しいレシピが手に入らなくなる、それだけは断固阻止しなければならない」




 目が本気だ。食道楽ってのは知っていたが。ここまで来ると凄いな。



 多少の譲歩も必要かもな。

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