第178話失意の王

 ギルド撤退騒ぎから一月が経過した。私は全てを賭けて事をなしたつもりだ。貴族や有力商人、狩人から一般市民まで全てを使い、なんとか防衛準備を整えた。今は間引きを始めてそこそこのの成果が出てきている。



 当然これだけの基盤を作るのが容易い訳ではない。対価は派閥の誕生だ。元々あったが今回の件で大きく王族派と貴族派で完全に二分した形だ。




 こうして、何とかこの国の一命は取りとめた。しかし、国力はかなり落ちたと言わざるを得無い。現に隣国が狙っている節がある。魔獣で手一杯で他に手が回らない状況。美味い獲物に見えるのであろう。この国は前途多難だ。




 そしてアヤ・・・死んだようだ。何故あの娘はあそこまでしたのか。私には未だ理解が出来ない。報告が本当であれば一人でオーガの一群を屠る武の持ち主。アヤがいくら強くても、分があるとは思えない、無論本人にも分かっていただろう。それにそれだけの逸材、何故引き込む努力をせず排除に進んだのか。




 今となっては詮無き事か。




 この国は延命こそ成功したが最早長くない。開拓を任せた才能溢れる女領主に早々にこの国を逃げる事を勧めた。




 私は遠からず今回の責を問われ、死ぬだろう。息子を担ぎ出して傀儡にするところが濃厚かな。エルフの森の時点でアヤを裁くのが正解だった。出来ぬだろうがな。



 あとは短い時間をどう過ごそうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る