第130話巨壁の国へ

 俺は今、困惑している。爺さんに乗って巨壁の国の城に来た間では良いが。国民どころか国王までもが平伏して出迎える始末。いくら格上であろうが民の前ではあまり見せて欲しくない姿ではないだろうか?



 それだけなら。まあ、俺に関係ないし。良かったんだよ。しかしこの爺は「後はこの者に話すが良い」と言うと外に出て行ってしまった。




 城自体は豪華絢爛さなどは微塵も無く。堅牢さや機能性に重きを置いた物だった。成金趣味よりは好感が持てる。しかしだ、今は別だ。互いどうすれば良いか困惑している。部屋は広いが閉塞感があるため、どんよりとした空気がよけいに酷く感じる。



「私は、この国の王をしている、ライノ・ウォールだ。よろしく頼む」



 王にしては若いな、見た目は高校生くらいか?



「私はドラゴンとの盟約により、此度のお手伝いをさせていただく・・・名は。商人とでもおよび下さい名を名乗らないのは盟約故なので、御容赦下さい」



 偽名を使うのもありだが、ボロが出そうなので、爺さんを利用させてもらおう。



 それから俺はこの王からこの国の状況や成り立ち等簡単にだが聞いた。




 この国は元々豊かな地下資源及び山脈があり、度々それを狙う他国との戦いが絶えなかったそうだ。そんな時シロ爺の先代とこの国は盟約を結び、巨壁をドラゴンの力で築いた。




 侵略はピタリと止んだそうだ。そりゃそうだろう、30メートルは超えそうな岩の壁。実際この目にしたが、あれを人が落とすのは難しいと思う。




 だがここ10年である勢力がちょっかいを出している。教国だ、巨壁の国の周囲の国を神の名の下に次々平定。そして、この国から出る、行商人を次々殺害。盗賊に扮しているが、ほぼ教国だろうとの事。




 この国は、食料自給率が良くない。輸入に頼るしかないのだそうだ。因みに正規軍を護衛に当てながら何とか食料を仕入れる事が出来ても周囲の国は全て敵国。戦争状態と言う訳では無いため、一応食料は買えるが、値段はボッタクリも良いところだそうだ。




 このままでは、民や己が餓えて死ぬか、搾取され続けるか。ドラゴンに助けを求めようにも、謎の軍隊が橋の前に鎮座するように守っていて通れなかったそうだ。




 正直詰んでいるとしか言えない状況だ。周囲の国が攻められてる時に、ある程度危機感をもっていれば多少は違う状況だったろうに。




「商人殿には食料をどうにかして欲しいのだ。仕入れ値の三倍は最低でも用意しよう。どうかお願いしたい」




 さて商売を始めますか。

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