第116話過去の人間
俺は額の汗を拭いながら木に腰掛けた。妖精の実の木。妖精の木でいいか。それの移動が思った以上に重労働だった。後は転移符を回収して、帰るだけだ。
妖精達の結界跡地は今やただの森だ。あまり長居しないほうがいいだろう。
そろそろ戻るかと転移符を取ったとき、炸裂音がすると共に俺は吹き飛んだ。装備のお陰で、貫通はしないでも凄まじい衝撃だ。急ぎ木々に隠れると周囲を探った。
しかし、探るまでも無く向こうから話しかけてきた。
「アレを食らって生きておるとは、良い鎧を着ておるようだな。我が国で勝手をしたのだ、覚悟は出来ておろうな?」
しくじった。のんきに休んでいた俺が悪いか。さてどうしたものか?
「だんまりか。まぁ良い、貴様の種子島を寄越せ。それで今回の件は不問にしてやろう」
種子島?こいつ何時の日本人だよ。せめてマスケットとか火縄それっぽい呼び方はいくらでもあるだろうに。今、最高に嫌な可能性が出てきた。ここは鎌を掛けて、確認して逃げるか。
「いきなり種子島とは。恥知らずうつけものだな。俺は日ノ本が薩摩の勝又。貴様の名は?」全て適当だが、相手が答えれば儲け物、ダメなら即撤退だ。
「やはり日ノ本の者であったか。わしの名を知りたいか。ならば武器を寄越し、わしの軍門に下れ」
嫌なほうにビンゴだなこりゃ。
「断る」
そういって転移符を起動した。
転移符の部屋に付くと、撃たれた場所見てみる。痣がある程度で、差ほど傷はないようだ。これも希望の破棄者のおかげであろう。人が関わる事象に対して効果があると見て良いだろうなこれは。
これはルイにも伝えなきゃならんだろうな。
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