第107話欠片の中

 目を開ければそこは、見知った一年近くなった部屋の天井だ。俺が目覚めると共にミルが部屋を飛び出していった。



 凄まじい物を見た。彼の半生を。無論空きは多い。しかし、彼が何を思い、何を成したか。それは理解できた。



 ルイの息子であるのは間違いない。記憶に授業参観に来ていたルイが学生と間違われて先生に怒られる記憶があった。



 出来事だけ見ればラノベか?で済んだ。そこに一つ魔術に対する知識が混じらなければ。



 多分、彼の禁術を除く最上位の魔術だろう。効果は簡単彼が思う原初への帰化。そんな領域を生み出し自在に消したり出したりする。



 所で我が故郷の諸君、知っていただろうか?我々は既に魔術師なのだ。ただ体感できないだけ。体を動かすのに多少ではあるが魔力を使っているらしい。それは人に限らず全てに言える。



 この領域ではそんな魔力が体内の物も含めて全て消失する。すると生き物はこの補助を失うのだ。当然個々の差はあれど運動に影響が出る、酷い者たおれるだろう、元の世界ではマナ自体が薄く一般人への効果は動き辛さに慣れてしまえば問題ないレベルであるそうな。


 この法則の中ははっきり言って不便の塊だ。使えなくなる物に科学反応など人が見つけ出した概念も含まれてしまう。



 それがこの欠片から手に入れた魔術だ。使い勝手は非常に悪い。だがこの有用な使い方は見てきた。あとはできるか次第だろう。




 にしても喉が渇いた、腹も減ったな。全身だるいし、後で食事をもってきて貰うように頼むか。



 血相を変えて部屋に入ってくるルイ。



「ダイス、大丈夫か?」



「ダルイ、空腹、喉カラカラ、後は大丈夫だ」



「5日も目を覚まさないから、焦った」安堵からか座り込むルイ。



「今パン粥と水をもってこさせる。ゆっくり食べないと危ないから気をつけて」



 しばしして、パン粥と水が届く。粥はミルクとチーズが使われている。そこそこ貴重品なのだがな。気遣いありがたく頂こう。




 なんとか人心地ついた。




「ダイス、悪いが内容を聞けるか?」



「ああ、確かにアンタの息子の記憶だろうな、アンタが出てきたぞ」



 それから 唯々話した。彼の半生を、ルイが死んでから、魔術師に魔導士の資格欲しさに攫われ、強制的に弟子入りさせられ、ある程度の修行の後、魔術学園。それからは色々あり。静寂と闇の精霊の下へ従者として就職? 全く凄い経歴である。そして戦争と異世界への逃亡。こんな所であろう。




「それが息子か、顔の特徴とか妻の物と良く似ている」



「ルイ、一つどうしても気になった事があったんだが、聞いて良いか」



「ああ、いいとも」



「ルイは死んでこちらに来る時、体が若返ってそうなった訳ではなく、元々そうなのか?」



「予想に過ぎないが、体は全盛期の時の物だと思う。家系の、いや、魔術の問題で全盛期はこの姿なんだ。色々弊害も多いけど、そういう家系なのさ」




 特殊性癖の皆様に朗報です。ルイの家系は合法的なロリとショタがいるそうです・・・俺?俺はこう、バイン・・・なんでもない。お姉さんのほうが好きなのだ・・・誰に言っているんだ俺は・・・



「ダイス、ありがとう。息子は己が道を行き、辛かろうがしっかり歩いている事は良く分かった。それだけで十分だ」



 ルイはとりあえずは満足してくれたようだ。俺は信じられないくらい、気の長い課題を貰ったが、身になる事だ、頑張ろう。

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