第103話商談成立

「定期的にこの取引をしませんか?」実にシンプルな提案である。双方にメリットは十二分にある。おれはリスクを背負う必要があるが。



「確かにありがたいわね、でも貴方はどうやってここに来るつもり?毎回案内役を置くのは無理よ」



 無論そこも当てはある。数少ない虎の子ではあるが、ここで使うのはありだろう。



「これを使います」転移符を見せ、効果を説明していく。3枚しかない虎の子、1枚は起点として持つ必要がある。従って使えるのは2枚。現在いける場所は、ルイ達がいるあの店だけである。




「何故そこまでするの? 確かに人はコレを欲しがるみたいね、でもこれほどの物を使ってまで、私達と対等に取引しようなんて人間はいないわ、そういう人間からすれば私達自体が商品なのでしょう?」



「それが気に入らない。 だからそれを潰す目的もある、はっきり言って、ここのみなは外に出れば鴨だ。だが、食料を求めて外に出る必要が無くなれば、そうなる必要も無い」



 これがここの住人のメリット、おれのメリットは継続して実が手に入る事。



「それでいいわ、このままではじわじわ捕まっていくしかなかったもの、貴方に賭けるのも、悪くは無いわ」



 女王は振り返り「貴方達、実を取ってきなさい、今ある物を取れるだけ、どうせ食べなければ朽ちるのです、この商人に美味しい物に変えてもらいましょう」




 なんか、凄い勢いで皆散ったな。数分後・・・目の前には大量の実が、これは凄い。樽で15は埋まるのではないだろうか?



「確かに、商品を受け取りました、代金にこちらを」実の10倍食料を出す。実自身の価値が分からないので気持ち多目だ、正直損しても良いと思っている。



 こっちに来て、碌でもない人間ばかり相手取ってきたから、こういう純粋無垢な生き物の存在はある意味救い?いや、癒しだろうか?ネコカフェ的な。



「さぁ今日は、良き商人のお陰で、宴を開けるわ。皆、準備なさい」



 そこから先は混沌としていた。あっちこっちで騒いでるだけだが、楽しそうなので良しとしよう。見てる分にも微笑ましいしな。



 終わる頃にはあちこちでそのまま眠るコボルト、その上で寝るフェアリー。集団で丸くなるネコの妖精、本当に自由な連中である。



 そんな俺もいい加減瞼が重くなってきた。やるべき事は多いが、今は寝るとしよう。


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