第99話交渉以前の問題
「まず聞こう、俺は罪人かなにかか? 領主殿」
「少なくとも、私は貴方が罪を犯したとは聞いてない」
「であればこれは、質の悪い恐喝だな。領主なんて立場の人間がやる事じゃない、よって如何なる理由があろうと取引の答えはノーだ」
周囲の兵士からの圧力が強くなった気がする。主の提案を聞く前から切り捨てたのだ、当然といえば当然だ。
「そのようなつもりは全く無い、せめて話くらい聞いてくれないか?」
「断る、コレだけの武装した兵士に囲ませて何を惚けてる。商人が交渉するのは最低限の信頼がある相手とだけだ。アンタにはそれがない。それに隣の男は見るだけでも気分が悪い」
真を指差しながら俺は言う。
「俺は今すぐ、この町、いや、アンタの領土から出て行く。関わらないでくれ」
「それは出来ない、敵の脅威がそこまで迫っており、尚且つ打開できる可能性が目の前にある。それを逃がす事は統治者として出来ない」
「どうせこうなるとは思っていたよ、従って使い潰されて殺されるか、抗って殺されるかの二択。なら俺は抗う方を選ぼう」
空間庫から普通の剣を取り出す。
「何故、貴方は答えを急ぐ、聞く前から答えを出すのはおかしいだろう?」
「何故そこまで僕達を拒む、正義はこちらにあるはずだ」
やはりこの世界に来ると、同郷人はほぼ頭のねじが外れるらしい。
「聞くまでも無い。新しい武器を持って侵略に来た馬鹿をどうにかしろ、あるいは手伝え、がお前等の要求だ、違うか? そしてその答えはノーだ。 義理がない、相手に誠意が無い、自分の命を賭ける程の理由が無い。そして何よりそれだけの力が無い。そこの疫病神はくだらない勘で評価が妙に良いようだが、そんなものは無い」
「どうしてもダメか?本当に後がないんだ」
「これ以上続けるようであれば、私にも考えがあります。今回の事をギルド総長に伝え、それ相応の対処をお願いする事になるでしょう、かまいませんね?」
「臆病者め」
はっ?聞こえた方を見ると、疫病神がいた。
「力があるんだろう? 何故逃げる。何のための力だ、ふざけるな」こいつは最早相手をする価値が無い」
やれやれと方をすくめると、おれは完全に無視して領主に話しかける。
「今回のやり方は、ギルド所属者を不当に使い潰そうする行為その物。これがどういう事なのかお分かりになるはずです。今すぐこの兵士達を引かせて、貴方方もお帰り下さい。今なら見なかったことにします」
「普通なら、とっくに引いている。だが存亡がかかっているんだ。すまないが拘束させてもらう」
ですよね、後が無い人間はなんだってやる。想定の範囲内だ。さて切り抜けるとしよう。包囲しているから相手は余裕がある。だが本当に包囲したのだろうか?
答えは否、上ががら空きだ。にじり寄る兵士あざ笑うかのように俺は、俺専用の階段を駆け上がる。
後は、空中を散歩するかのように、外へ出るだけ。俺を警戒しすぎて距離を取ったのが仇となったな。領主様。
銃による皆殺しも考えたが。銃を見せるリスクより、こっちのほうが幾分かマシだろう。なにより精神的に平和だ。
魔力消費はそこそこするが、この魔術本当に使い勝手が良い。足場に魔力を流動させればよく空港なんかにあるムービングウォークのように(エスカレーターの床版)使うことができる。
どの地に行っても碌な事がない。呪われてるのでは?と思うほどだ。この世界にも厄払いとか無いのだろうか?是非とも行きたいものだ。
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