第89話半年の成果とルイからのお願い

 ここ半年の日課を説明しよう。起床して、準備をすると馬鹿夫婦を叩き起こし、ひたすら生地の作成と、窯の扱い方を叩き込んでいく。残念ながらミルが最近では、あまり無理をさせられない体なので、あまりやらせていないが。見学だけは参加させる。



 それが終わると店だ。今の所あまりメニューを出していない。俺が出た後できるか不安だからだ。なので現在はピザ、パン。加工肉(ベーコン等)比較的準備さえしておけば楽な物にしてある。それでも、この辺りでは評判の良い、店として忙しいのだが。



 この時点で結構な疲労状況ではあるのだが、むしろここからが本番だ。どこかで聞いた話だが、疲れきってどれだけ動けるかが、戦場での生存の鍵だとか。そう思わないとやってられない。



 半年での成果だが。まず、あまり気絶する事が減った。今では週1くらいまでに抑えている。この一度もルイが本気になりかけているのが原因で、むしろ己の成長を実感できる数値とも言えよう。



 内容は、通常の修練から、空中に変わり。足場を空中に作りながらの、より三次元的な修練となっている。



 魔術に関しては、ルイ自身驚く程覚えが早く。 「私も結構、苦労したんだがね? 前の世界で君が弟子ならきっと愉快だったろうね」とお褒めの言葉をもらえる程度には、習得速度が速いようだ。



 多分この思考の高さのせいだと思う。ルイに唯一勝るのがこれだけだから、多分そうだろう。因みにレベルはそのままだが、思考は気付けば4000に到達しそうである。



 他に成果らしいものと言えば、ルイから教わったものがしっかりとスキルに反映されている事。それからこれはあまりに殴られすぎたものだろう、防御系スキルが軒並み上昇している。



 希望の破棄者レベル8・・・人間から受けるダメージを7割減。与えるダメージを5割増。


 万象の守りレベル6・・・これも2割減になっている。



 人間相手ならほぼ、負けないだろう。ルイのような例外は当然除いての話だが。



「ダイス君、もう十分なんじゃないかい?」ふとルイは俺に問う。



「十分な事なんてこの世には無いですよ。ルイ自身が良い例でしょうに」



「それを言われると辛いな」



「どうしました? 俺の修練に時間がさけないなら。そういって貰って良いですよ。今まででも十分に教えて貰えた訳ですし」



「そう言って貰えると、助かるよ。一つ頼みがあるのだが、良いかな?」



「可能な限りお応えしましょう」



「この、転移符の部屋は空き部屋だよね?」



「そうですが?」



「レイナを私が帰るまでいさせて欲しい。私は前回の落とし前を付けに行かなくちゃいけない」



 敵対者の処理か。これから家族を持つ身としては、不安要素を取り除きたいって事だろう。




「無論タダとは言わない。十分な金と君への装備、そして魔術書。これでどうだろうか?」




「報酬が大きすぎて眩暈がしますね。お金は店の資金としとけば、なんとかなるでしょう。あいつ等も納得させます」



「本当に良い弟子だ君は。帰ってきたら、空いた分だけ詰め込んでやるから、サボってたら酷い事になる、覚悟する事だ」



 最後に物騒極まりない事を口にして、ルイは転移符で帰っていった。



 まずは二人に許可を取る事から始めるとしよう。








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