第66話一番欲しい物は安全です

 あの王、場を治めやがった。すげぇ、この状況でよくもって行った。直感だがあの王は今回の襲撃とは無関係だろう。あの少女が部下にいるのだ、俺がここにいる可能性はシロップの出所で見当が付いたのだろう。


 正直、同郷らしき人間がいる事は、脅威以外の何物でもない。挙句になんだよ魔闘士って物騒極まりないわ。



 コンコン。だれだろうか?



「私だ。話を聞きたい」



 リュートか、仕方ない。今日はもう休みたいがそう言う訳にはいかないようだ。



 ドアを開けリュートが入ってくる。



「どうしたんです?」



「何故、自力で倒さなかった? お前は出来たはずだ」



「あんな化物無理ですよ。例え出来たとしても、皆さんに任せるのが最善だと思ってますし。この上なく理解しやすい光景だったでしょう? 相手の弁解など許さないくらいには」



「成る程、敵だと厄介極まりないなお前は。本題だが、お前に直接謝罪したいそうだ。一応安全のために場所はこちらで指定させてもらった」



「今からか?」


「今からだ」





 村長の家



 入ると、件の恐喝少女、と王。それに村長、ガウ、リュートがいた。良く見ると、控えにミル、スロート、レイナがいた。



 一番に口を開いたのは王だった。



「ダイスよ、本当にすまなかった。できる限りの償いはしよう、希望があればそれも叶えよう。本当に申し訳なかった」



「それでは希望があるのですが、よろしいでしょうか?」



「出きることなら最大限やろう」



 周りは静観を決め込んだようだ。



「大した損はさせませんので、安心下さい。ギアスでそこのお嬢さんも含め、王は俺に二度と関わらない、俺の情報を何処にも漏らさない。無論間接的にもダメです。簡単で大した損もありませんよね?俺はもう酒もパンもシロップも権利は譲渡しましたから、ただの庶民です。普通関わる事が無いし、気に掛ける存在でもない。簡単ですよね?代わりに今回の事は言わない事を誓いましょう。ギアスを使用しても良いですよ」




「それは待ってくれ、まずダイスにはオーガの恩賞すら渡せておらん、それを放棄するのだろうか?」



「そんな物はいりません、先ほどの願いの前では石ころ程の魅力も感じませんし」



「随分嫌われてしまったか。良いだろう。有能な魔術師を召抱えようと思っていたが、縁がなかったようだ」



「いけません」



 少女は怒鳴るように言う。



「そいつは危険です。手に入らないなら殺すべきです。私のような無知な学生としてこちらに来た訳では無いのです、他の国に渡れば取り返しの付かない事になります」


 成る程ね、あくまで俺を殺そうとするか。しかし、ここでそれを言うか普通。



「成る程、謝罪などする気は更々無かったという事でいいのでしょうか?」



 少なくともこの少女はギアスで縛らない限り生かしてはおけない。



「謝罪するつもりは、ある。こやつはどうにも心配性が過ぎてな。本当に申し訳ない。ギアスの件は受けよう。それで許して欲しい」



「ダメです」



「アヤよ選べ、この場で死ぬか、ギアスを受け入れるか。お前は確かに私を思って言っているのだろう。だがな、その行動は現在エルフとの和解の妨げにしかならない」



「ギアスはガウェイン殿のものでいいのだな?」



「問題ないです。ガウお願いしていいか?」



「了解、僕は契約書の作成に取り掛かるから、不備や不満があれば双方言ってください」



 さて、ガウの契約師のレベルを上げる。解呪なんてのは想像出来る。ならばせめて、術師の底上げをして、強固にするくらいはすべきだろう。



 この調子であれば、すぐさまここを逃げ出す必要も無いだろう。

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