第65話対処
相手の出方を見る?認めよう、考えが甘かった。見た目で判断したのは俺の過失だろう。
勢い良く蹴り飛ばされた。
「さぁ、全てを吐き出しなさい。貴方の持ってる、知識を全部。少なくてもお酒、パン、メイプルシロップの製法は持ってるでしょ?」
成る程、この世界に来ると、女学生でもこんなに逞しく、恐喝をやるわけだ。嫌な世界だねぇ。だが、俺の勝ちだ。元々人間が相手なら、負ける可能性は低い。
更に俺に時間を与えた。今ではイカサマでの低下は呪術の括りとなって、時間も然程いらないしな。
既に殺人的な蹴りを放った、女学生はいない。いまやただの餓鬼だ。
「お断りだね、盗賊まがいの犯罪者にくれてやる物は何一つ俺は持ってない」
それにさ、この状況。俺はすぅっと大きく息を吸い込む。察した女学生は止めようとこちらに来ようとするが、ただの餓鬼にそんな身体能力は無い。
「賊だーシロップの製法を盗みに来た賊が出た。助けてくれー」
王の演説に割り込むように、俺の声は広場にこだました。当然オールロードを起動する、凄まじい速度でエルフ達は救援に駆けつけてくれた。
佇む少女、破損がある建物、寄りかかるようにして、傷ついた俺。現場はこの上なく明快だった、これが日本であれば戸惑う場面だろう。しかしここは剣と魔術がある世界。こんな少女でも十分な力を持っていてなんら不思議ではないのだ。
ここまでくれば、後は適当に暴れられる程度の力を戻してやるだけ。これは慈悲だ、最善を捨てた慈悲。
最善は力を奪って、引き金を引き、その後空間庫に放り投げればそれでお終い。だが寝覚めがあまりに悪い。これでこの地からも去らねばなるまい。
どう見てもタイミング的に王の部下、例え違うとしても関係者。そして弱体系の魔術、もしくはスキルがあるとバレる。これから面倒になるのは間違いない。
少女の方が、逃げ出そうと暴れたが、取り押さえられた。もう犯人にしかみえないだろう、事実だしな。
そこまではまあ良い、大変だったのはその後だ。当然王は批難される、どう見たって王の差し金にしか見えない。
王は素直に謝罪した。あくまでそんな指示は出してない。そこだけは頑なではあったが、部下を御せなかった責は私にあると、あまりにも簡単に頭を下げた。
誠意も感じられた。その姿は、子がやらかした時に謝罪するそれに見えた。
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