第10話勇者死す

「誰だてめぇ」勇者(笑)さんは威勢が良い。しかし、体の違和感を感じて困惑してる様子を隠せていない。




 どう見てもDQN(粗暴で頭が悪そう)な彼を放置して、リュートさんに駆け寄る。


「酷い怪我だ、なにがあったんだ?」



 リュートさんは無理やり起きようとするが、体勢を崩す。俺はそれを受け止める。


「すまん、ダイス、お嬢様を連れて逃げてくれ。私は奴の足止めをする」



 周りを良く見ると、可愛らしいエルフの少女が、オロオロとしていたがリュートの元に駆け寄ってくる。


 どうやら、向こうにも事情を聞く必要がありそうだ。



「そこのお兄さん、この人は俺の知人な訳だが、なにか用かい?」


「男の方には用はねぇよ。女の方は売れば高いらしいから、味見して売る、それだけだ」


 日本人だよなこいつ? サイコパスか? この世紀末的思考は平和な日本じゃそうそう育たないだろうに。


「ただの人攫いってことでいいのだな?」リュートの剣を勝手に借りてだが、構える。剣道の上段の構えだ。


「良い度胸じゃねぇか。勇者に村人が敵うわけねぇだろうが」



 勢い良く突進してくる相手の剣を剣先でいなす。対人闘技のレベルを4にしたのでDQN一人どうという事は無い。元々こういう馬鹿から身を守る為に前世で習った訳だし。



 ここで一つ問題だ。こいつを取り押さえる等実に容易い。しかしだ、次やれば確実に俺は死ぬだろう。ステータスを弄る時間をくれれば話は別だが。




 いや、答えは出ている。分かっていて躊躇しているのだ。人間を殺すという事に。殺すという選択肢が出る時点で俺もサイコなのかの知れんな。殺るなら、相手が逃げの判断をしていない今だ。良く見れば手は震えている。脚もだ。




それでも相手の剣をいなすのは容易く、容易に。そうこんな風に首を刎ねる事が出きるのだ。


 一時はどうなるかと思ったが、どうという事は無く、人殺しで捕まるかと思えば。手の付けられない悪党を討伐したという事で、逆に恩賞として大金貨を3枚貰った。町の人も良くやってくれたと、良くしてくれる。



 リュートだが手持ちの薬があったらしくある程度回復できたらしい。


 気分がとにかく重いステータスで確認すれば何か分かるかも。




 レベル14


 力31


 HP72


 防御25


 MP50


 速度16


 思考250




 状態・・・混乱



 希望の破棄者・・・勇者を殺害する事で入手可能。人間に与えるダメージを3割増、受けるダメージを5割減。人間での保持者は初。




 うわぁ・・・スキル名が酷い。まるで俺が悪役みたいだ。レベルが凄く上がっている。腐っても勇者様って事か。まだ見るべき事は多くあるだろう。でも、もう疲れた、寝て一度落ち着こう。



 俺は崩れ落ちるように寝床に入った。

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