冒険者異端書

シルビア

己との戦い

ーーハァ……ハァ……


俺は人ならざる者共から逃げている最中だった、目の前で村人が殺され、犯されていた中、自分は逃げる事しか出来なかった。


「何処へ行くの?キャハハハハ!」無邪気な笑いをしながら追い掛けてきているのは女ヴァンパイアである。女から逃げるのは情け無いとは常々思うが、今回ばかりは違う、何故なら向こうは化け物だからだ。そう言い聞かせながらひたすら走っていたが、木の枝につまづいて転んでしまった。振り返ると近くに化け物はいたのだ。


「もう終わり〜?ざんねーん、もうちょっと楽しみたかったなあ」「よく見ると可愛いわねえ、取って食べちゃおうかしら」俺は震えて怯える事しか出来なかった、化け物が俺を抑え血を啜ろうと首元の筋に顔をうずめた。化け物の強さ、己の無力さを体感した瞬間、横から呪文が聞こえた。

上位魔法:聖なる光<ホーリー>

化け物は呪文に気付き、瞬時に逃げていった。助かったのだ。


呪文を唱えてくれたのは冒険者組合からの応援の者達だ。その一人がこちらに寄ってきた。「大丈夫か?村の人達は無事か?」「自分は大丈夫ですが、村の人達は皆もう…」憎しみや悲しみを堪え、握り拳を作る事しか出来なかった。


「そうか、それは残念だった。名前を言ってなかったな。俺の名前はバルビダだ、隣は俺の心頼もしいパートナーのルーシュだ」「ザウリスです、さっきは助けてくれて有難うございます。」「ザウリスか、良い名前だね。職業はなんだい?」「戦士ですがまだまだ非力で、ハハ」乾いた笑いしか出なかった。


「なら冒険者組合へ行ってみるといい、耳寄りな情報も手に入るし、何よりスキルも上がる最高の場所さ。君も来るかい?」「行く宛も無いので着いていきます」即決だった、何故なら居場所が無いのだから。


冒険者組合の冒険者はランク付けされている。上から宝石級、金級、銀級、銅級となっている。助けてくれた冒険者は金のプレートを持ってたので金級となる。雑魚な俺をそこに行けという提案は皮肉なもんだ。だがそこへ行けば強くなると信じ、助けてもらった人達について行く事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る