第一章【始動篇】
第1話『北朝鮮ミサイル攻撃・よみがえれ戦艦大和』
時に、西暦二〇二二年──
精霊魔法の根幹たる『太陽因子』は、日本国と異世界『方舟』を邂逅せしめた。
太陽神天照大御神がもたらした太陽因子を皇室を中心に受け継ぐ日本、そして太陽のエレメントを代々の王が継ぐ異世界が、ある事件により邂逅したのだ……
……その事件とは、日本神話の炎の破壊神カグツチによる異世界侵攻である。
イザナギに殺されたカグツチは、太陽因子を持つすべての者を滅ぼすべく、先代異世界『箱庭』を滅ぼした。
太陽因子を色濃く受け継ぐ箱庭女王アリスは、臣民を新たに創造した異世界『方舟』に転移させ、崩御した……アリスを失って以来、方舟の精霊魔法は衰退しつつあった……日本と接触するまでは。
──方舟が現れた世界は、日本列島、西ノ島だった。
……日本国と方舟は友好関係を築き、国交記念式典を開く。
その席上、歌手『西村美咲』の歌が放つ太陽因子に反応し、デューゴスことカグツチが姿を現す。
カグツチは日本国・方舟両国への宣戦を布告し、人民解放軍、そして魔界の軍を掌握。
この危機に、日方両政府は美咲の歌で精霊魔法を増幅し、立ち向かったのだ。
天皇の秘術もあり、カグツチは長きに渡る呪縛から解放され、天界へと旅立った。
時は流れ、西暦二〇四五年──
魔界の皇帝は、太陽因子を奪うべく、日本と方舟に侵攻を開始する。
新日本神話──新たなる物語が始まる……
その名は……
《 新日本神話 第三部 【新日本神話:急】 第一章「始動篇」 》
どこまでも高く抜けるような青空のもと、下界では雲が大地と海を包み込む成層圏の世界──
──その青い空を四本の飛行機雲がたなびく。
二本の飛行機雲が高みへと飛翔し、その後を二本の飛行機雲が追いかける。
日の丸を翼にあしらった白銀の戦闘機の群れ。
シャープな機首に流線形のフォルム。胴体下に抱えた並列二発のジェットエンジンが特徴的だ。
機体に対し斜めに取り付けられた主翼は空力を考慮された後退翼だ。機体後方からは、V字型の尾翼が機体上方に伸びている。
機体最後尾の二発のバーニアからはオレンジの炎が吹き出し、機体の速度を超音速に押し上げる──
日方共同開発戦闘機【 F3『ジークフリード』 】その編隊である。
パイロットは日方の混成であり、日本の航空自衛隊からは飛行教導隊、方舟からは魔導士たる精霊族が参加するトップガンだ。
二番機パイロットのアレクシスもまた、方舟の魔導士であった。
金髪に空を閉じ込めた色の青の瞳の彼。その笹のような耳はヘルメットに隠れていた。
酸素マスク越しにも精悍な顔立ちがわかる。
隊長機からの通信が入る。
『ジークフリードリーダーより各機、北朝鮮に不穏な動きがある。俺たちはその偵察任務だ』
了解、とアレクシスたちが返答する。
デジタル化されシンプルなデザインのコックピット、そのレーダー画面を彼は見やる……
──次の瞬間【 ALART 】の表示が出た!
やかましく警報音が鳴り響く。
隊長機にアレクシスは叫ぶ。
『ジークフリード2よりジークフリードリーダーへ! 北朝鮮ミサイル基地に動きあり!』
『何!? ……こちらでも探知した! 北朝鮮より八発の弾道ミサイル発射!』
隊長は航空総隊司令部に回線を繋ぐ。
『こちらジークフリードリーダー。北朝鮮ミサイル発射を確認! 繰り返す、北朝鮮ミサイル発射!』
* *
航空自衛隊、航空総隊司令部──
ここ航空総隊司令部には、BMD、すなわち弾道ミサイル迎撃を担う統合任務部隊が設置されている。
ジークフリードフライトに、空自のレーダー部隊。いわゆるパトリオットミサイルを装備した、最終防衛を担う空自高射部隊。加えて、海自のイージス艦が航空総隊司令官のもとに統合運用されるのだ。
「ジークフリードフライトより目標情報入りました! 北朝鮮内陸部より八発の飛翔体発射」
「護衛艦『まや』に通信、弾道ミサイル軌道のトレース及びSM9ミサイルによる迎撃を!」
航空総隊司令官、
「目標、ロフテッド軌道で上昇中!」
ロフテッド軌道とは、弾道ミサイルが高高度で鋭く弧を描く状態である。
まやからの中継映像が繋がる……
甲板に埋め込まれた垂直発射装置……その天蓋が開き、排気口から火炎が吹き上がる。
弾道ミサイル迎撃ミサイル──SM9がその中から上昇、天空に舞い上がる。
「──まや、SM9発射!」
中央のスクリーンが切り替わり、ミサイルの軌道が光点で映る。
弾道ミサイルにSM9が迫り……
──命中!
「やったか!?」
「待ってください。……!?」
オペレーターが驚愕の表情に変わる。
「一発撃ち損じました! 目標は高速で日本列島に向かいます!」
「くそっ!」
早蕨が拳を握りしめた。
弾道ミサイルが日本に落下する。
もはや、希望はないと思われた…………その時!
「司令官! 護衛艦『やまと』より入電!」
「やまとだと!? ……まさか……!」
* *
【 起動シークエンス開始 】
【 第一主砲塔・第二主砲塔発射可 】
暗闇の中にディスプレイの光が灯り、機械の作動音が鳴る。
機械に囲まれた暗がりの中で作業するクルー……その中の制帽を深く被った男が腕を組み、うつむく。暗闇の中でその人相はよくわからない……
別室から通信で状況が伝えられる。
『主機始動……全動力線コンタクト。全電力スイッチオン……』
電気が通じ、室内が明るくなる。
光に照らされたその男は黒髪短髪、刃のように目つきの鋭い強面だ。
彼は叫ぶ──
「対空戦闘、用意──!!」
港湾に設けられたドッグにそびえる一隻の巨大戦艦が唸りを上げ、主砲を動かす。
全長二〇〇メートルを超すグラマラスな巨体……前甲板には三連装主砲塔が二基構え、後甲板にも一基の主砲塔が鎮座する。前後に副砲五インチ砲が据えられ、各所には高性能二〇ミリ機関砲が構える。
そして天守閣のような艦橋がそびえる。
──これこそまさに、海上自衛隊が誇る護衛艦『やまと』の勇姿だ。
「北朝鮮弾道ミサイルをここで迎撃する! 主砲発射用意!」
「了解!」
ヘッドセットをつけたオペレーターが兵装を操作する。その中には笹穂耳をつけた異世界人の姿もあった。
「主砲魔導砲用意! 魔法陣展開!」
「目標北朝鮮弾道ミサイル! 自動追尾よし」
「主砲撃ち方始め──」
「──撃てぇっ!」
紅蓮の魔法陣が主砲砲身を中心に回り、砲口に収束──光を放った!
深紅の光が青空に吸い込まれ……
──爆発!
……統合任務部隊司令部でも状況がモニターされていた。
「映像回復──」
砂嵐の後、スクリーンにやまとの主砲が仰角を目一杯あげ、砲口から煙を吐いているのが映った。
やまとに見入っていた早蕨空将だったが、我に返り、オペレーターに報告を求める。
「状況は!?」
「やまとより通信! 繋ぎます──」
刃のように目つきの鋭い黒髪短髪の男がスクリーンに映る。
「東城艦長……!」
その男は、護衛艦やまと艦長、
早蕨も彼を知っている。
元海上自衛隊自衛艦隊司令官、
洋祐は敬礼ののち、口を開く──
『北朝鮮弾道ミサイル迎撃しました。尚、破片の落下等はありません。迎撃成功です!』
司令部の一同がどよめき、嬉しさに拳を握りしめる。涙を流す者までいた。
早蕨がマイクを取る。
「よくやってくれた……! やまとの奮闘に感謝する!」
「はは……懲罰ものですかな?」
洋祐は笑ってみせる。
「……独断専行の本件だが、安心してくれ。私の責任で不問にしよう」
「感謝いたします。早蕨空将」
暮れかかる空……ブルーとオレンジのコントラスト。
夕陽がやまとを照らしていた……
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