Tear

薄(ススキ)

――遥か昔、世界に一つの星が落ちました

Prologue-1.1


 遥か昔、世界アールマティに一つの星が落ちました。


 星は大地を砕き、多様な生命を死なせました。


 それを嘆いた女神オルフィスは人の生き残りであった初代オリートと共に世界を再生させました。


 しかし女神オルフィスは力を使い果たし眠りにつきました。


 その際、女神オルフィスは初代に告げました。


「世界は再生した。だが人々の争いで大地は死ぬだろう。私の復活を望め。私を目覚めさせよ。さすれば私はまた世界を救おう」


「君に、私の力を授けよう。私の変わりに世界を見守ってくれ」


 初代は女神オルフィスから力を授かり今も世界を見守っています。


 それはずっと昔から、そして未来も。


 女神オルフィスが目覚めるその日まで。



 おしまい。

――…いや、もしかしたらはじまりかもしれないね。



 西には夜の女神が、東には昼の女神が姿を現す頃、赤い目の青年は微笑んで言った。

 親に内緒でこっそりと起きてきたキャラバンの幼子は、小さな拍手をする。金の髪の青年は一礼し、幼子のまだ薄い髪をそっと撫でる。


 鞄を手にとり、幼子に手を振って黄金の聖職者は歩みだす。孔雀の羽色にも似た、あざやかな青緑の二又マントが風に舞う。


 幼子は、彼の背に翼を見た気がした。

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