男子に告白されました⋯!

深海美桜

第1話

ついに⋯この日が来た!

今日は私が待ちに待った高校の入学式。


綺麗な校舎、おしゃれなカフェテリア、親に邪魔されない全寮制、珍しくて可愛いワンピース制服⋯物語の中にしか存在しないと思ってた夢のような学校。しかも共学!

それを見つけたときから、絶対ここの生徒になってJKを謳歌するんだ!と決めて、受験勉強を始めて受験して、合格発表の一覧に自分の番号があった時の喜びがまだ忘れられない。


今日から私はあのワンピース制服を身にまとって、ここの生徒になるはずだったのに…何故か私は男子の制服を着ている。


遡ること、受験日当日


最初に違和感を感じたのは面接の時。女の先生が私の名前を呼んだのだが最後に「君」がついていた。おかしいなと思いつつも他の受験生の前で「私、女子なんですが…」と訂正するのが恥ずかしかったから、何も言わずに立ち上がり面接の部屋に入った。

面接官は50代くらいの男の先生だった。好きなスポーツは?と聞かれ、小さい頃からサッカーをやっている事を話すと「並木君はすごいねー」と誉められた。

この時にも「君」をつけられたが、誰にでもそういう呼び方をする人なのかなとスルーしてしまった。


あ、並木は私の名字です。名前はとし

最初は季子の予定だったらしいんだけど、ちょっと古いからって両親が名前を変えようと思い立ったのが、市役所に提出する期限の前日で、「季」って字だけでも可愛いし、珍しい読みは覚えてもらえやすいよね!という言い訳じみた理由で名前が決定したんです…


それから、合格発表があり、制服が家に届いた。

この時点で間違われていたことが決定づけられた。学校に連絡すると、説明したいから学校に来てほしいと言われたので他の新入生より一足先に学校の門をくぐった。


学校に着くと先生らしき人が校門の前で出迎えてくれて、校長室に連れていかれた。

着いて早々、私は校長を質問攻めにした。


「私の性別は女です。受験票にも書いてありますよね?」

「はい。」

「では、なぜ男子の制服が届くんですか?」

「すみません。」

「謝罪ではなく、説明をしてくださいませんか?」

「それが……ちょっとした、手違いでして…」

「はい?」


ここからの説明には呆れたので、要約すると、カッコいい顔で、カッコいい声で、習っているスポーツもカッコよくて、だそうだ。「カッコいい」と言えば何でもOKだと思っているのだろうか。カッコいいの前後に(男みたいに)とか入りそうな話し方だった。

納得はいかないが、一応説明は聞けたので、本当に頼みたいことを言ってみた。


「…分かりました。それで、制服は取り替えてくれるんですよね?」


すると、校長は口ごもる。間違えたのなら制服を交換するだけで済むはずなのに、なぜかすぐに答えない。次の言葉を待っていると、衝撃的な事を言われた。


「…できません、交換。」

「は?」


すっとんきょうな声を出してしまった。

だって、できないなんて言われると思わないから。


「女子生徒の定員ピッタリが入学決定してまして、女子寮の部屋にも空きが無く…

なので、今年一年は男子生徒として過ごしていただければ…」

「はぁ!?」

「来年の編入試験免除で入学決定にしますので!」

「そういうことじゃありません!男子生徒として…って、私、男子寮で男子と暮らすんですか!?」

「そうしていただけると…あ、あと女子だということは決してばれないように…」


ありえない…こんなとこ即入学取り消しよ!って言って飛び出したいところだけど、ずっと入りたかった高校で、ここだけを狙ってたから他の学校受けてないし、留年してもう一回受験するほどのお金も家にはない。ただでさえここの学費は家計的には結構、厳しい…。


「で、では、1年間の学費免除でどうでしょうか?」


今、考えていたことを解決するようなことを校長に言われ、よりいっそう辞めたくなくなってしまった…

いや、でも男子だよ?見た目がこんなんでも女子として生きてきたのに、いきなり男子になれるもの?それに、私のJK生活は?せっかくの共学だし、恋だってしたいじゃん!

でも、留年はきつい。お金だって…でもでも…


結局あのあと、考えすぎてオーバーヒートして、何もかもどうでもよくなり、欲だけで回答してしまった。分かりました、と。


そして、今に至る…


「はぁーいいなーワンピース制服…」

「だよなー分かるぜ、その気持ち!」

「わぁ!!」


いきなり後ろから声をかけられた。しかも肩を組まれたから驚いて声を出してしまった。

振り向くと…

だ、男子!?なんで!って、あそっか、今の私は男子生徒だった…

あー今にも心が折れそう。慣れる気がしない!

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