冬の幻視(まぼろし)
寒の暁には
怜悧な羽根の
蜻蛉がつぃーつぃーと
細雪に混ざりこみ
わたしの心を
薄く
うすく
スライスして
春も夏も秋も
冬もなく
町の風景に散らばめてゆき
ます、冷え切った
手は
あなたの手を
足は独りで
町外れで
土筆をふみ
舌は
赤
いろ
あかね色
にじみ
いろいろな人の
舌に
本音を聴く耳と
柔らかな
耳たぶは雪に
触れて
冷たすぎるから
舐めてもあまり甘く
ないのでしょうね
汗と潮が混ざる
匂い
あなたが
入道雲を背に
走ってきます
雪いろの蜻蛉が
つぃーつぃーと、寒いねと
わたしに向けられた言葉に
染み入って溶けるから
あぁ、やっぱり冬だよと
洩らした途端に
春に向かって
一斉に
雪いろ蜻蛉
たちは
飛び去るのです
冬を薄らうすらと
切り裂く
まぼろしが
年の空に飛び交う
つぃーと
あなたの指さきが
頰を掠って雪と
すれ違いそらに流れた
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